不幸話に隠れた真実

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

一昔前に流行った「あの人に会いたい」的番組の、後味の悪いエピソード。

相談者(以下A)は初老の女性。
十数年前に生き別れになった二人の子供と再会したいという。
司会者に促され、Aは涙声で自らの半生を語る。

田舎から上京したAは、ある男性と交際する。
彼の子を身篭り、結婚、出産。
都会の雰囲気に舞い上がったまま、あまりに無計画に創られた家庭だった。

無論うまくいくはずもない。
いい加減な夫はいつしか酒と賭博に溺れ、借金を重ね、Aに暴力をふるうようになる。

子供たちの為に、離婚だけはしないよう耐えていたAだったが、ある日夫は、借金を全てAに押し付け、子供たちだけを連れて夜逃げする。

実家に迷惑をかける訳にもいかず、借金を返す為に昼夜を問わず働くA。
何度も自殺を考えたが、生きていればいつか子供たちに会えるかもしれない。
Aはそれだけを支えに、ただただ必死に働き続けて・・・。

・・・まるで三流ドラマのようにチープでありきたりな不幸だが、それ故に聴衆の心には強く響く。
スタジオにいる人間は皆、目に涙を浮かべ、嗚咽を漏らす者すらいた。

「借金を返し終えた時、真っ先に浮かんだのが子供たちの顔でした。自力で何年も探しましたが手がかりがなくて・・・」

Aの言葉に司会者は頷く。

「Aさん、私たちスタッフはAさんの為に必死で探しました。そして・・・彼らを見つけました!スタジオにも来てもらってます!」

どうぞ、の声と共にスタジオの隅から男女が現れる。
不幸な生い立ちなど微塵も感じさせない、聡明そうな顔つきの若者ふたり・・・・
Aの子供たちだ。

一際大きな涙を浮かべるA。
拍手に包まれるスタジオ。
促す司会者。
Aに歩みよる子供たち。

「立派になったね・・・」

Aは両手を広げる。
それは最も原始的で、最も確かな愛情表現。
子供たちは、十数年ぶりの、母の抱擁を、手で制し、拒否した。

凍りつくスタジオ。
ややあって息子が口を開く。
無感情に、ゆっくりと。

「母のーーーこの人の言葉は、全て嘘です」
「この人は育児のストレスから酒と賭博に溺れ借金を重ね私たちに暴力をふるいました。見かねた父が私たちを連れて逃げたんです。私たちはあなたと会いたくなかった。ずっと憎んでた」

・・・この後どう収集つけたかは覚えていない。

母親は勿論、彼女を糾弾する為に出演した子供も、流した製作側も、歪んでる。

10年以上前の番組だから全てヤラセかもしれないけどね。

あと今色々調べてみたら、この番組はこの手法(ガチで因縁ある人呼んで放送事故ギリギリのトラブル起こす)が日常茶飯事だったみたい。
知人から聞いた話だったんでこの回だけが特別だと思って投稿しちゃいました。

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