その時既に死を決めていた

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

数十年前、私が小学四年生位の時の話。

うちの地元は結構な田舎だった。
だから近所付き合いも濃く、私自身は知らない人でも両親や祖父母とは幼なじみだったり知人友人だったりで、外で遊んでいるとよく知らない人から声をかけられたり、お菓子やみかんを貰ったりしていた。

そんな環境で育った私は、ある時一人の女性と知り合った。

確か一番初めは夏の頃。
友人と遊んでいる時、暑いから家でジュースでも飲んでいきな、と声をかけられたんだったと思う。
友人共々お邪魔して、おやつやジュースを頂きながら聞くところに寄ると、その女性は私の母の幼なじみで、そのお宅の一人娘。婿を取って両親と四人で暮らしているらしい。

子供の私達の学校であった話やくだらない話も聞いてくれて、優しいお姉さんと私達はすぐに仲良くなった。

その後も何度か同様に遊んでもらっていたが、冬のある日。
帰り際にお姉さんから、もう着ないから良かったら、とセーターを渡された。

私は発育が良かったため、身長はお姉さんと同じくらい。
だから私にも着れるだろうと渡してくれたんだと思う。
けれど、そのセーターはまだ新しく、申し訳なくて断った。

それでもお姉さんは、もしも気に入らなかったら○○姉ちゃん(私の母)に着て貰って、と引かなかった。

断りきれずありがたく頂いて、母にも報告しサイズも丁度良かったため、私の服になった。

その数日後。
お姉さんは首を吊り、自殺した。

動機は不妊症による心労だったそうだ。
だから私達子供を招いて遊んでくれていたんだろうか。
セーターは形見分けのつもりで渡してくれたんだろうか。

「もう着ない」とはこういう意味だったのか。
と、子供心に酷くショックを受けた。

もしかしたら、セーターを渡してくれたのは、気づいて欲しいというサインだったのかもしれない。
私が気づいたところで止めることが出来たのか、何を出来たのかわからないけれど、今でもたまに思い出しては後悔している。

貰ったセーターも、ずっと着続けほつれサイズアウトした今でも、捨てることが出来ずにタンスの中にある。

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