奥さんがキレた理由

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

Aさんが大学生の時、お中元の配達のバイトをしました。
自分の車を持ち込んで家などを回る仕事です。
たくさん回ると時給以外に報奨金も出るため、その日も暗くなる時間まで配達に回っていて最後の1件になりました。

大きめの家の前で玄関から見える位置に車を停め、呼び鈴をならすと中から感じのいい中年の奥さんが出てきました。
荷物を渡すと、奥さんは玄関の横の部屋に印鑑を取りに行きました。

奥さんは印鑑を持って出てきましたがなんか様子が変でした。
急にAさんに向かって「荷物の中身がおかしい。一度開けて詰め直したでしょ?あなたがやったの?」とまくしたて始めたのです。

身に覚えのないAさんが唖然としていると、その奥さんは「分かっているから正直に言いなさい!今営業所に電話するから上がって!」とAさんを無理矢理中に連れ込んでドアをぴしゃりと閉め、カギまでかけました。

「そんなことしてません!」と言ったものの奥さんは何も耳に入らない様子で泣きそうなAさんを前に電話をかけ始めました。

電話がつながって奥さんが話し始めるとAさんはさらにびっくりしました。

「もしもし、警察ですか?今うちに配達の人が来てるんですけど・・・ハンコを取りに隣の部屋に行ってふと窓から外を見たら、その人の車に刃物を持った男が乗り込んで後部座席に隠れたのが見えたんです」

電話が終わると奥さんはAさんに向かって「ごめんね、怪しまれると逃げられると思って」と演技だったことを打ち明けました。

5分もしないうちに警察が来て車を取り囲み、男は逮捕されました。
近くの精神病院から抜け出してきて、家に帰るために車を乗っ取ろうとしていたらしいです。

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