俺の友人でズボラな奴がいた。
ある日、そいつん家に遊びに行くと奴はトウモロコシを焼いていたんだが、何かがポロポロ落ちている。
よく見ると・・・虫だった。
「おおおお前何してて」と慌てて俺が言うと「古いモロコシだったからなあ、でもホラ、TVとかで虫食ってる国とか出るじゃん、似たようなもんだって、お前も食うかい?」と。
「いや、断る」
「なら1人で食うもんね」と、物凄い勢いでモロコシを回し、ガリガリとモロコシを食ってしまった。
「お前絶対腹壊すって」
俺が言うと、そいつは「虫の幼虫だけにね、お腹がね」と、何のとんちも効いてない解らない事を言ってゲラゲラ笑っていた。
何だかはっきり言ってムカついた。
それから一週間後ぐらいに、そいつん家にいった。
そいつは古い木造造りのアパートの2階に住んでいて、道路からそいつの部屋半分が見えるんですね。
着いたのは夜だったので明かりが点いているのを確認。
すると、道路からそいつの部屋を見上げると蛍光灯に照らされたそいつの影は飛び跳ねたり変な踊りをしていたりと異様な光景があった。
俺はビックリしてアパートの階段を上がり、そいつの部屋をノックすると「ぐるんぐるん」「うにょんうにょん」と訳の解らない言葉が聞こえてくる。
恐る恐るドアを開けてみると、そいつは畳みの上で寝転がりクネクネと体をくねらせているではないか。
それを見た自分の体から血の気が引いていった。
心臓の音が物凄くゆっくりになったのを覚えている。
俺を見つけたそいつは「きたんきたん」「みてんみてん」と訳解らん言葉を吐きながら、這いつくばってクネクネさせながら俺に近付いて来ました。
「ちょちょちょちょ」
俺が叫ぶとそいつは急に立ち上がり「ビックリした?」と、言ったので「オメーふざけんなよ、マジでビビッタじゃねーかよ」と、俺は怒りながらそいつの顔を見た、が、目が完全にイッている。
俺に話しているのに焦点があらぬ方向に行っている。
そして常にステップを踏んでいる。
「お前どしたん?」心配して言うと、そいつが「こうしてないとさ、来やがんだよな」
俺「何が?」
そいつ「上から、ね」
俺「ん、ん、ん?だから何が?」
そいつ「だいたいは部屋の隅からやって来ます」
俺「いや、だから・・」
そいつ「たまーに排水溝からやって来たりもします、します」
俺「あの・・」
そいつ「来ます、来ます、来ます」
俺「わり、俺帰るわ」
そいつ「来ます、来ます、来ます」
そして俺はそいつの「来ます」コールを背にアパートを後にした。
それからは恐くてあいつには会っていない、そいつの家族には「なんかちょっと疲れてるみたいなので様子を見に行ってあげてください」と電話をしておいた。
他の友人の話だと、今はどっかの病院に隔離されているだとかアフリカに旅立ったとか色々な噂を聞くが、俺はそいつには二度と会いたくは無いです。
あまり恐くなくて申し訳ないです、でも俺にとっては死ぬ程恐かった出来事でした。
あの時の焦点の合わない友人の目は今でも忘れられません。
「来ます、来ます、来ます」の声も。