親父と荷物とノコギリ

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

親父は俺が小2の時に事故で死んだらしい。
らしい、っていうのは、実際に親父の死体を見たことが無いから。

後で親戚に聞いた話によると、電車に轢かれてグチャグチャだったとのこと。
未だに俺は親父がどんな仕事してたのかも知らないけど、小さい頃(確か4歳くらい)にこんな事があったのを何となく覚えてる。

その頃はいつも俺と母さんが風呂に入ってる頃に親父が帰ってきて、俺は風呂あがってそのまま寝室に行って寝ることになってた。
んで、ある夜のことなんだけど、親父がいつもより遅く帰ってきて、いつもは風呂場のぞいてから飯食ってたはずなのに風呂をスルーして奥の方に歩いてった。

その時擦りガラス越しにになんか黒っぽいものを引きずってるのが見えて、それを見た母さんが気まずそうな顔で俺を見てた。
俺はそれが何なのか全然わかんなかったから母さんに尋ねたんだけど、母さんは凄い怖い顔して俺の方を見ただけだった。

ちょっと怖くなった俺はそのまま寝ようと思ったんだけど、寝室の真下の部屋から親父がノコギリで何か一生懸命切ってるのが聞こえてきて、どうしても気になったからこっそり覗いてみた。

そしたら、親父はいつも食事してるテーブルの上で何かをを切ってた。
見たことも無いような嬉しそうな顔で・・・。

見てるのがばれたら殺される気がして、震える足で寝室に帰ってから、寝ようと思っても眠れなかった。
次の日の朝、親父はいつものニコニコした顔でいつものように出かけていった。
母さんも昨日のことは忘れてるみたいだった。
知らないフリなのかもしれないけど、やっぱり聞いたら殺されそうな気がして何も言えなかった。
この思い出と親父が死んだ理由が今でも関係ありそうな気がしてならない。

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