テントを覗くばあさん

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

俺が中2の部活行事でキャンプ行った話。

山のハイキング道を20分くらい登った所にあるキャンプ場で一泊二日のキャンプやったんよ。
バスケ部の男だけ20人くらいで、しかも夏休みにね。
普通なら合宿やるんだろうけど、顧問の先生はバスケ素人だったし、まあ何かやろうって事で行ったんだと思う。

そしたらまあキャンプ場というか、テントを張るだだっぴろい草原と水道、バーベキュー用の台座、簡易トイレくらいがあってさ。
他には何もない。

着いたらテント張って、山の中を少し走って、カレー作って食って、テント6つに別れて就寝。
今思うとバスケ部なのに何やってんだ?って感じだけど、まあ当時は楽しかった気がする。
俺は同級生2人と一緒に3人でひとつのテントに寝てたんだけど、暑くて寝れないんだよね。

仕方ないからゴロゴロしてたんだけど、テント狭いし自由に動けない。
ちょっとテント出て水飲みに行こうかなって思って、目だけ何となくテントの入り口見たらもうめちゃくちゃビックリした。
入り口は開けてて、蚊よけの網を下ろしてたんだけど。
網に顔を近付けた中年のばあさんがしゃがんでテントの中を見てるんだよ。

その目が凄いひん剥いててギョロッ、ギョロッと動くからもう恐いなんてもんじゃない・・・。
月の光がばあさんを照らしてたから、ばあさんからテントの中は真っ暗に見えてたんだと思う。

ただその時はそのばあさんの動向っていうか、異常すぎる雰囲気に目を奪われて、ただ気付かれないように見てるだけ。
そのまま寝たふりしたら『もしかしていきなり入ってきて殺されるんじゃ?』って思ったくらいだから。
ばあさんはギョロギョロと目玉を動かして、テントの中を何やら確認してる感じ。
普通しないでしょ、そんな事。

顔を地面に着く位に低くして、テントの中の上?を見たりしてた。
そんな行為が時間にして5~10分近く続いてたと思う。

俺も「友達いるし、コラァ!とか言ってやろうか?」って思えるくらいになってて。
で、どうしようか迷ってる時にばあさんが小さな声で何か喋りだしたんだよ。
凄い早口みたいに口がゴニョゴニョ動いてたし、声小さすぎて聞こえなかったけどお経かな?って。これも今思えばね。

とりあえずこの状況から脱出せねば、と思って足を少し動かしたら友達のバッグがあった。
で、イチかバチかでそれをバコッと蹴ったんだよ。
寝呆けたフリで。
そしたらそのバッグが友達の頭に当たり、「いて・・・」って声を出した。

ばあさんはバッグを蹴った時にビクッ、ギョロッと目を動かし、

「いて・・・」って声がした時にまたギョロッと目を動かし制止したまま。

「あ・・・、いて~」って友達が上半身起こしたら「ヒハハハハハッ!!」ってすげーハスキーな低い声で笑ってパッといなくなった。

恐る恐る蚊よけ網のチャックを開けて、顔を出して確認したら誰もいない。
汗だくだったしとりあえずテントから出て立ち上がったら、テントの真横にそのばあさんも立ってたんだよ!!

「ぎゃあああああ!!」って言おうとしても声が出ない!!

そのばあさん、実は顧問の嫁だった。

ババアの嫁連れてきてんじゃねーよ!!ボケが!

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