一般人はあまり近寄らない地区

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

とある会社員が出張でロスへやってきていた。

彼は久しぶりの休日にロスの街に出向く事にした。
ロスの街は相変わらず賑やかで住んでいる田舎町とは違い活気に溢れていた。

車を走らせチャイニーズシアターからちょっと行った通りを右に曲がり目的のアクセサリーショップに行くはずだったのだが、どうも道を間違えたようだ。

「しまった」

彼は自分の失敗に愕然とした。

何故ならその通りのあちらこちらには黒人やメキシコ系のやばそうな奴らうろうろしているし、ひと目でジャンキーとわかる白人が路地にうずくまっている。

ロスのダウンタウン近くにはこのような地区は珍しくも無い。
一般人はあまり近寄らない地区だ。
実際こういった地区に踏み込んで被害に合う観光客は毎年数多くいる。
彼は急いでここから脱出する事を考えた。

幸いまだ昼間だ。
よほどこの事がなければ大丈夫なはずだ・・・と自分に言い聞かせ信号では出来る限り停止せず、タイミング悪く赤信号でつかまりそうなときでも、オートマチックのギアはドライブに入れたままにし、いつでも発信できるようにしていた。

周囲の視線は真新しい日本製の乗用車が気になるようだ。
そして中にいる小奇麗な東洋人も。
にたにた笑っている奴もいる。
手にもった金属製の棒状の何かをぽんぽんと放り上げている奴もいる―ナイフだろうか?

彼は生きた心地もせず脂汗が流れてくるのがわかった。

瞬間どこかでパァーンという何かが破裂したような音がした。

「えっ」

とそっちを見ようとする目の前を何かが掠めた。
そして窓ガラスに小さな穴があいている。
振り向き反対を見るとそちらにも・・・。
その先にはガタイの良い黒人が何かをこちらに向けて立っていた

彼は慌ててアクセルをふみ車を急発進させた。

信号は全て無視だ。
危うく他の車とぶつかりそうになるのもお構い無しに走らせ、その地区を一目散に逃げ去った。

そうその小さな穴はピストル弾が貫通した跡なのです。
黒人は彼に向けて小口径のピストルで撃ったのです。

あと数センチ、弾道がそれていれば彼は死んでいた事でしょう。

1998年夏の出来事。
その彼とは私の事です・・・。

また今年の夏ロス出張が・・・。

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