強盗の手口

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

仕事が終わって帰路に着いた。
22時前後のこと。

途中で高速の高架下を通るんだけど、そこ、ちょっと変な作りで、低い天井と緩いカーブの見通しの悪いトンネルになってるの。
眠かったからスピードは出していなかったと思う。

でも、『それ』はカーブを抜けたすぐ、しかも地面に転がっていたから、ブレーキが間に合わなくて轢いちゃったのね。

人間をすっぽり包んだ形状の毛布・・・。
厳重に巻かれたロープ・・・。

勘だけど、左が頭、右が足みたいだった。
左のタイヤがモロに乗った感触があった。

頭潰した!!!

そう瞬間に思ったんだよね。

ゆっくり乗り上げたから、形まではっきりと感じちゃって・・・。
すぐに停まったんだけど、びびって車降りられなかった。

あれ、人間?本当に人間?

何回も自問した。
ちょっとだけ前に進んで、バックミラー越しに確認したら、そのままの形で転がってる。

5分ぐらい、そのままだったと思う。
救命措置をしなきゃって覚悟を決めて車から出ようとしたんだけど、本能的に逃げてしまいました。

逃げた・・・というか、交番に直行した。
半泣きになりながら駐在さんに説明したら、パトカーに乗って同行してくださいとのこと。
現場に着くまで、どういう心理だか駐在さんに謝りまくってた。

ところが、現場には何もないの。
血の跡もない。

サイレンを鳴らしてきたのですぐに野次馬でいっぱいになったんだけど、怪しげな騒ぎもまったくなかったっていう話。

何がなんだかわからなくて混乱してたら、駐在さんが、またパトカーに乗せて交番まで戻ってくれた。

私は知らなかったけど、市内ではときどき同じようなことが起こってたんだって。
人通りのない田舎道に人間っぽいものを置いておいて、轢いた車の所有者が慌てて車から飛び出したところを強盗するって犯罪。
被害額が少なかったので、新聞の地方版にしか載ってなかったのね。

私はなぜ車から降りなかったんだろう・・・。
というか、降りなくてよかった・・・。

犯罪のために轢かれ続けた人形が、なんかの信号を発してくれたのかな。

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