おかしなヤツの方が断然怖い

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

三十席位ある二階席の、はじっこの方で俺は食事をしていた。
他の客は女性が一人と、DQNの二人連れ。

半分位まで食べた時、一人の男がトレイを持って二階に上がってきた。
リーマン風の普通の客。
俺の席から一つ離れた席に座った。

その男は携帯片手にハンバーガーを食べていたのだが、なぜかしょっちゅう体を揺すっていた。
背中を背もたれから離したりくっつけたりと、そんな動きを繰り返していた。
それ以外におかしな様子もなかったので、あまり気にしないようにしていたんだが、その揺れがだんだん激しくなり、男はバンバンと音を立てて背中を動かしまくっていた。

その動きが最高潮に達した瞬間、今まで食後に本を読みながらボンヤリしていた女性が、ものすごい勢いで立ち上がって、食べ終わったトレイも片付けずに猛スピードで下に降りていった。

男の奇妙な動きが不快で逃げたのかと思ったが、女性のあまりに焦った様子が気になった。
何だか気持ち悪くなり、悪い予感?のようなものを感じた。

俺も慌てて立ち上がった。
DQNは俺の事など見向きもせずにホットペッパーを開いて談笑している。
男は普通の顔で携帯をいじりながらも狂ったように背中を背もたれにぶつけている。
階段を駆け下りていると、背中からDQNのものか男のものか分からない細い悲鳴が聞こえたんだが、俺は関わりたくなかったので、足早に店を後にした。

やっぱり、幽霊より生きてる人間のおかしなヤツの方が断然怖いね。

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