4~5歳くらいまで、父親が2人いたんだよ。
それも、浮気とかじゃなくて、同じ父親が2人。
意味がわからないと思うけど、顔かたちはまったく同じなんだけど、目つきだけが異様な感じがする、とにかくこの世のものとは思えない存在だった。
どういうときに「そいつ」が来たのかは覚えてないが、いつもの父親と同じように家に帰って来てた。
でも、俺も母親も、「そいつ」が父親じゃないってことは肌で感じており、玄関の前にきたときから震えていた記憶がある。
そして「そいつ」は家の中に入ると、決まって家具や皿をめちゃくちゃに荒らすんだよ。
俺は恐くて目をずっとつぶってるんだが、耳には母親の「やめて!」という声が今でもこびりついている。
断言できるが、俺の父親は優しく、そんなことをする人ではない。
でも、顔が同じで性格がまったく逆の、もう1人の「そいつ」は確かにいた。
今、そのことを親に言っても、「そんなことはなかった」しか言われない。
あれはなんだったんだ・・・。