夜19時から深夜にかけて、ほぼ毎日ご近所の家のチャイムを鳴らして「こんばんわー吉岡でーす、お届けに参りましたー」って言って去っていく通称「チャイムおばさん」って人がいた。
お届けになんて言ってるけど別に何かお仕事とか親切でなんか届けてるわけじゃなくて、おそらく病気でそういう行動してるんだと思う・・・。
まぁ皆「また今夜もきたか・・・」くらいな感覚でいつも無視してるし、家もそんな感じで無視してた。
朝にはチャイムおばさんが昨夜お届けしてくれたであろう、結構な量の砂が玄関にぶちまけられてる・・・。
まぁこのお届け物はランダムで大量の葉っぱとか石とかたまにお菓子なんかもあって、学校では今日は「なにが届けられてた~」だの、「また砂だったわ~」などで盛り上がったりもしていた。
まぁ色々あるといっても主には砂で朝は朝刊取ってきて玄関掃除が日課になってたんだ。
んである日のこと家に親戚一家が遊びに来て俺と同い年の親戚の子にその話しをしたら、俄然興味持って「今日きたらドアの覗き穴から監視してようぜ!」みたいな話しになった。
俺はなんか知らんけど、あの人は無視しなければダメな人みたいに教わってたから・・・かなり拒否したけど、最終的に「大丈夫だから!」とか「俺が倒してやるから!」とか言われて渋々折れた。
その日チャイムおばさんは夜19時38分にやってきた。
時計見ながら「今日は来ないでくれ!」って祈ってたからかなり覚えてる。
「ピンポーン」
「こんばんわー吉岡でーす。お届に参りましたー」
部屋で待機してた俺と親戚の子はダッシュで玄関まで走ると、お互い交互に覗き穴からチャイムおばさんを覗いた。
そこには普通のおばさんが大きなビニール袋から大量の砂をぶちまけてる姿があって、俺はそれ見てビビりまくっていたんだけど、その時、親せきの子が何を思ったのか、玄関開けてチャイムおばさんに「何してるですか?」って話し掛けた。
その瞬間、チャイムおばさんは親戚突き飛ばして俺も突き飛ばして部屋に侵入してきた!
俺が起き上がる頃には他の家族が晩酌してたリビングから「ぎゃぁぁぁ!!」とか「うわぁぁぁ!!」みたいな悲鳴が上がってて、ダッシュでリビングに向かうと、なぜか体育座りしなざら体を左右に振りまくってるチャイムおばさんが凄い形相で俺の妹を睨み付けてた。
「んっふー!!んっふー!」
みたいな呻き声あげながら・・・。
妹はもう恐怖で動けないみたいで顔面蒼白でチャイムおばさんを見つめてた。
家族親戚皆恐怖で動けなかったんだけど、ひとり我に帰った父親がそっと妹に近寄って手を引いてリビングを出た。
その後無言で他の家族親せき一同もリビングを出て二回の俺の部屋に鍵かけて避難した。
一時間近く無言で俺の部屋で身を寄せ合ってたんだけど、それからちょっとして親父と親戚のお父さんが「そろそろおらんくなったか見てくるけん」といって一階に降りていった。
まぁそれで親父たちが部屋の隅々まで確認したけど、チャイムおばさんは消えててその後全員で戸締まり確かめて全員一緒の部屋で寝た。
次の日、俺らはかなり怒られ大泣きしたの覚えてる・・・。
その後もチャイムおばさんは夜には訪れていたが、俺は高校で遠方に進学し大分を離れてしまったため、その後のことは知らなかったけど、大学3年なって今年のGWに久々に大分帰ったら、あのチャイムおばさんはかなりオカルトな存在になっててびびった。
まず、あの砂なんだけど今思えばかなりサラサラした砂だったんだ、どうやらそれは近くの山の上にあるお城跡から持って来てるらしくて、まぁ入手経路はいいんだけど問題は砂を各家にまくスピードが異常に早いってこと。
大体チャイムおばさんが出現するのは19時から深夜0時なんだけど、確実にその時間内に100件近くは回ってる・・・。
しかも、大量の砂を持って移動してる・・・。
にもかかわらず、砂を女の人が運んでる目撃証言は皆無に等しい。
もう一つはチャイムおばさんの住所が不明なこと。
俺の家の後にもチャイムおばさんに乗り込まれた事件が一件あったらしく、町内の会議で止めるよう求めるため住所を調べようとしたが、誰も分からんかったらしい・・・。
まぁ一度警察に連絡したらしいから警察とかは分かってたのかも知れないけど、親父やご近所周りでは未だにどこから来てどこに消えるのか謎らしい・・・。
今はチャイムおばさんの出現率はかなり減り、一ヶ月に一回あるかないかくらいらしい。
実際俺もGW中は会えませんでした。
とまぁこんな感じのたいしたオチもない話です。