私が中学生だった頃の話。
母は父とは離婚していたので、私と姉は母親に引き取られ3人で暮らしていた。
母親は保険会社で働いていて、そこで仲良くなった人を良く家に連れてくる事があったのです。
その仲良くなった人をAとします。
Aは30歳ぐらいの女性で、一人暮らしをしていて犬を飼っていた。(犬種は太ったコーギーw)
お互いの仕事が早く片付いた時に家に来るようで、少なくても1週間に1回は必ず来ていました。
Aは家に来る時必ず犬も一緒に連れてきていてなんでも犬を一人で家には置いておけない!とかが理由だったみたい。
私は当時、素行が悪かったというか・・・言ってしまえば不良だったので、飯を食べたら夜から遊びに行く~なんてのがザラだったのですが、母親との関係が悪かった訳でも、喧嘩ばかりという訳でもなかったので、私も2人に混ざってお酒を飲むなんて事もあったりしました。
そんなある日、夜中の2時ぐらいに私のマンションの前で彼女と話をしていた。(因みに、その彼女は家が物凄く近かったので夜中に良く話をしていた)
私は夜中に家を出ても怒られなかったんだけど、彼女は違うので何かあったら直に帰れる距離で警察に見つかってもイイワケが出来る場所(自宅デス!的なw)=私のマンションの前で、というのが定着した。
話を戻す。
彼女との話の途中、ふと目を向けた先にAが犬を連れて歩いていた。
夜中の2時・・・その日は家にも来てなかったみたいだけど、何かあって家に来たのかな?とか思って声を掛けようと思ったけれど、彼女もいたし、向こうから何か言われたら返そうと思って黙っていた。
すると私に気がつく様子も無く、マンションの前を普通にスルーして通って行った。
その日の朝、母親に昨日の夜中にAが犬を連れてマンションの前を通ったと告げると、大分驚いたようで、会社で聞いてみけれど、「見間違えじゃないか?」なんて事を言われたらしい。
Aの家は私の家から車で15分ぐらいの距離にあるので、歩いてとか散歩でとか、まぁ私の家の付近に来ることも無いそうで、「やっぱり見間違えじゃないか?」という事で終わった。
その時は私もそう思って気にしていなかったんだけど、それから数日してまたAを見た。
今度は犬(太ったコーギー)もしっかり確認して、Aの顔も確認して声まで掛けた。
声を掛けたことで彼女が、「誰?」みたいな事を聞いてきたんだと思う、彼女にAの事を説明しAの方へ目を向けると、Aが居なくなってた。
彼女曰く、私が声をかけたてもスルー状態だったらしい。その後は私の話を聞いていたので良く分からないって。
で、その事を又母親に告げると、その日Aは会社のパーティーで地方へ行き、その日はそのままホテルに泊まっているはずだから、有り得ないみたいな事を言われたのを覚えている。
それを境に、夜中彼女と話をしている時必ずAが現れた。
彼女も気味悪がって怯えてたし、「私も幽霊じゃないか?つうかAの生霊?」みたいな感じで怖かった。
母親は「近くに似た人が住んでて、同じ時間に散歩させてるんじゃない?」程度に言っていたし、確かにそっちの方が現実的だったから、私と彼女もそれで納得というか、そう思う事にしてスルーする事にした。
だけど、そのAらしき人物は日を追う毎に行動が変化する事に気がついた。
横目で私の住んでいるマンションを見るようになったと思ったら、マンションを見ながら歩くようになり最終的にははマンションの前で立ち止まり、そのまま薄くなっていき消えた。
彼女が泣き喚いて大変だったので、とりあえず家に入れて母親に介抱させたw
母親は「女の子をこんな時間に!」って怒ってたけど、それどころじゃなく、事の次第を説明。
彼女と一緒になって「Aが消えたAが消えた!」って連呼してた覚えがあるけど、母親は苦笑いしながら「眠かったからじゃないの?」とかで信じてくれなかった。
で、次の日Aにその事を話したらしい。
Aも気味悪がってたらしいけど、そんな覚えは当然無いと言って、半身半疑だった母親と喧嘩になったらしい。
その喧嘩を境にAが私の家に来ることがなくなって、母親に「Aは?」って聞くと悪口が飛び出す始末で私のせいで仲を悪くさせてしまったのかと、少し罪悪感が沸いていた。
それから3~4ヶ月ぐらいたった頃かな。
しばらくの間、彼女とはマンションの前で話すって事を止めてた。(消えた事件ってのがあって以来)
その事件が記憶の中で薄くなっていって、また夜中に抜け出して話す事が日課になっていた。
もうAがマンションの前に現れることもなかったから、「やっぱり見間違いとか・・・夢?」ぐらいに思って彼女と笑いながら話をしていたその日、またAが現れた!
彼女は怯え出して、俺も驚いた・・・。
何に驚いたかって、様子が以前に見たときは全然違う。
犬は居ないし、髪はボサボサで、ブツブツ言って歩いてきた。
彼女を庇いながら後ずさりしてたら、Aはマンションの前で止まった。
「オイオイ、また消えるのかよ!」って思ったらマンションの方へ向かって歩いてきた。
顔も知らない不審者じゃないし、どうみてもAだから、恐る恐るAに声を掛けてみる。
私:「Aさん?おーい聞こえてる?」
そんな感じだったと思う、だけど返事は一切無しで、ブツブツ言ってる。
それで、私と彼女の前を通る瞬間、手に光るものが見えた。
よく見えなかったけど、包丁の刃先みたいなのが袖口から見えて、「おい!大丈夫かよ?」って聞いたらAがこっちみて叫んだ。
A:「大丈夫じゃないよ!!!!」
顔は引きつってた思うけど、驚いてとりあえず逃げたので、その後は良く分からない。
母親と姉が殺される・・・ってイメージ?良く分からないけどソワソワして、彼女にAがヤバイ気がするって言ったら、彼女は「良く分からないけど、お母さんの友達なんでしょ?なんで包丁みたいなの持って家に来てるの?」なんて冷静な発言を聞いてて恐ろしくなり、殺されてしまうかもという恐怖が一気にこみ上げてきた。
彼女の両親に怒られるとか、もうそんなのどうでも良くなって、彼女の家に行って、私の家に電話させて!って言って、電話を掛けたら母親が出た。
母:「はい、◯◯ですが、どちら様でしょうか?」
私:「A来てる?A居る?」
母:「なんだ、あんたか。ん?何処から電話してるの?」
私:「んな事よりAは?Aが家に来たかって言ってんだよおおおおおおおおおおおおおおおお」
母:「あんた怖いわね・・・まだ来てないけど、来るわよ」
私:「なんだよそれ・・・意味ワカラン、来てないのか?来るってんなんだよ」
母:「さっきインターフォン鳴って、話があるから家に入れて欲しいって言うけど、時間が時間だからって断ったのよ」
母:「だけどしつこく言ってきてね、様子も変だったし何かあったのかと思って今さっき開けたから、そろそろ玄関かな?」
私:「まだ玄関まで来てないのね?なら絶対入れるな!絶対入れるなよ?玄関着いてピンポン押してきても無視しろ」
ピーンポーン
母:「来たけど、入れるなって何よ?」
私:「入れるなあああああああああああああああ、殺されるぞ!!!」
母:「は?訳分からないんだけどアンタ大丈夫?」
私:「とりあえず・・・包丁がある、とりあえず入れるな包丁があるんだよおおお!」
↑もう、ピンポンなってテンパって私も訳分からずw
ピーンポーン・ピポーン・ピポピポピポ・ピーンポーン・ドンドン!って
母:「ほら、待ってるからもう切るわよ」
私:「マテ、いやマテ、開けないでお願いだから」
まぁハッキリとした会話は覚えてないけど、こんな感じの問答が続いた。
私が叫んでた部分を彼女の両親が聞きつけて「どうした!どうした!」とリビングに来る、親父さんが電話してる私を見て大激怒、受話器取り上げられて切られる。
それを見て私も大激怒、ゴラァ!な感じで取っ組み合ってたら彼女が「◯◯(私の名前)のお母さんが殺されるかもなんだよお!」みたいな事を言った瞬間に親父さん静止、彼女の母親が「警察に電話してたの?」って。
その後、警察に通報、とりあえず俺は彼女の家で事情を説明しながらソワソワして待つ。
警察が遅いので「・・・殺された」と思って泣きそうになってたら、パトカーの音が聞こえ、彼女の両親+私と彼女で家の前まで行くと丁度Aがマンションから警察に連れられて出来た。
そのままパトカーへ乗せられたと同時に私はマンションに向かって走り、オートロックのマンションだったのだがテンパって鍵突っ込めず、モタモタしてたら母親がマンションの中から警察に連れられて出てくるのが見えた。
その瞬間安心して涙が出た。
母親も私の顔を見た瞬間泣いてた。
その後の話になるけど、私との電話が切れた後、玄関の外でAが発狂しだしたそうな。
「出て来い!!!」みたいな事をずーっと叫んでたらしく、コレはヤバイと母親も玄関の鍵を開けることは無かったのだと。
それでも大暴れしているA、同じ階に住んでいた人たちが玄関を出て見ると、Aが両手に包丁を持ってたらしい。
住人は「不審者が暴れてる!」と思い警察に通報。
なので一気に2~3件ぐらい警察への通報が殺到したらしい。
しかし、分からない事は沢山ある・・・。
前から見ていたマンションの前をウロつくAはA本人だったと確信して、警察の事情聴取の時に前からAがうろついてたと話したけど、A曰くそんな事はしてないとの事だったらしい。
無意識で?とか夢遊病?的な精神障害も考えられるからと、警察が調べたらしいけど、Aは正常だったらしい。
それもそれで怖いけど・・・。
最初から母親を殺したくて、その想いが?マンションの前をウロウロさせた?とか、まぁよく分からない。
動機も不明・・・母親も確かに仲は悪くなっていたけど心当たりにないらしい。