刑務所に入ってやろう

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

八月も終わったこの時期に、この夏経験したマジ洒落にならなかった話をひとつ。

大学のサークルの仲間数人と他の大学で交流のあるサークル数人、合計12人(全員男)で某所にキャンプに行く事になった。
大型ワゴン1台に6人。
ムーブ1台に4人。
バイク2台にそれぞれ1人。

キャンプ地まで車で入れたので目的の場所に車をとめたのが昼の3時半頃。
設営やバーベキューの用意をしたり、近くにある川で釣りしたり、子供みたいに水をかけあって遊んだりして過ごした。

日が暮れてバーベキュー開始。
みんな酒も入っていろいろな話題で盛り上がったが俺は下戸なので飲まなかった。
それが後に悲劇を招く事に・・・。

何時間か飲んで食って騒いで過ごし、持ってきた花火でまた騒いで、だいたい落ち着いたのは11時くらいだったと思う。
酔いつぶれた数人を除いて色々駄弁りながら片付けをした。
全て終わった時にはもう日付が変わっていた。

やれやれと一息ついてまたどうでもいい話をしていると、サークルリーダーが飲み物が無いから買って来ると言い始めた。
しかし、かなり顔も真っ赤で一目で酔っているとわかるほどの状態だが、飲み物が無いのもいけないし、と行こうとするリーダー。
酒気帯び運転で事故ってもいけないと、一滴も飲んでない俺がその役を買って出た。
俺はバイクで行ったので買出しもバイクで行く事にして、財布だけを手にバイクで出発した。

最寄りのコンビニは往復40分はかかるだろうな、と思い、自販機がどこかにあれば、それでいいだろうと道を走ったが、結局コンビニまで行く事になった。
適当に買出しをしてついでに氷も買って袋につめてバイクに乗る。

夜道は暗いし、深夜で車も人通りも少なく言い知れない恐怖を感じてしまう。
何も出なければいいのに・・・と思いながらバイクを走らせていると、夜道に転々とある外灯の下に人影がひとつ立っているような気がして、思いっきりビビった。
見間違いだろうと思いなおしてバイクを飛ばす。

しかし、また少し走った先にある外灯にまた人が立っている。
俯いて、ただそこに立っていた・・・。

滅茶苦茶背筋がひやっとして、冷や汗かきながらアクセルふかした。
しかしまた行った先に同じように人が立っていた。

もう俺は「見てない、気付いてない」と自分に言い聞かせ、早く仲間の待つところへ帰りたい・・・と思いながら必死に飛ばして飛ばした。

テント設営地への細い道もバイクを走らせた。(本当は手で押すべき道)
目印となる小さな電灯を見つけ、ほっとしてバイクを止める。
そして皆が居るはずの広場に向かった。

しかし、そこには誰も居なかった・・・。

誰一人いない。
車も無い。
テントもない。
人がいた気配も跡形も無い。

とにかくもう真っ暗闇でさっき見たものもあって恐くて恐くて。
わけがわからなくてただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
仲間の携帯に連絡を入れても返答は無い。

パニック状態の俺。
とりあえず移動してみようとしたその時。
俺の携帯が鳴った。

真っ暗闇の山の中、突然流れてくる着メロは恐い。
非通知着信のその電話。恐る恐る出てみると・・・男の笑い声。

そして低い声で・・・「お・か・え・り・・・」

声の主は仲間の1人だった。
酔いも手伝って全員揃って俺をハメたらしい。

一斉に片付けをして俺が帰ってくる前に隠れたと言う。
さらに数人が面白がって外灯の下に立っていたのだそうで。
怪談でもなんでもないが、俺にとっては死ぬほど洒落にならない話で、その時は全員殺して刑務所に入ってやろうと本気で思ったぐらいだ。

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