病院で呪われた婦長

カテゴリー「怨念・呪い」

おそらく呪いとかそういう類のものになるのか?
イマイチ記憶が定かではないんだが・・・思い出しつつ書いてみようと思う。

うちの祖母さんは、元看護婦で、戦前病院に勤めていたらしい。
当時は今と比べて、死人の数が半端なく、死んだ人からナースコールとか窓の外の人魂とか、よく聞く病院の心霊現象が、本当に日常茶飯事だったそうな。

そんな訳だから、祖母さんは幽霊はいるものだと、よく子供の頃の私にそういう類の話をしてくれた。
これはそんな中でも、1番悲しい話として聞いたものだ。
祖母さんが新米看護婦だった頃、同期にもうすぐ同じ病院の院長の息子と結婚する予定の、とても綺麗な看護婦さんAさんがいたそうな。

ところが、その医者に横恋慕していたのが、婦長。
そして婦長とAさんがとある患者さんの処置にあたった時、婦長はAさんへの指示を間違えて、今でいう医療ミスを犯して、患者さんを死なせてしまった。

ところが、婦長は、自分はそんな指示をしていないの一点張り。
Aさんは懸命に自分の無実を訴えたが、ベテランの婦長とAさんとでは、当然婦長の言い分ばかりが通り、Aさんの主張は結局聞き入れられず、Aさんはその場で発作的にオキシドール?か何かの原液を服用して、自殺してしまった・・・・・・止める間もなかったそうだ。

美しかったAさんの、見る影もないほど、喉が真っ赤に焼け爛れた無残な死に様に、祖母さんたち同期は、悲嘆に暮れながらも、それ以上は成す術なく身寄りのなかったAさんを仲間うちだけでひっそりと弔った。

何年かして、婦長とAさんの恋人だった院長の息子が結婚し、婦長はこの病院で出産した。
ところが、生まれた子供は・・・・・・ぱっくりと、喉まで口が裂けていた。
口咳裂という病気・・・・・・ようするにうさぎ口だったようだ。

祖母さんたち看護婦はそれを見て、あっ、と思ったらしい。
その様子はまるで、劇薬を飲み、喉が焼け爛れて亡くなったAさんそっくりだったという・・・・・・。
結局、その子供がどうなったのかまではわからない・・・・・・祖母さんが話したがらなかったからだ。
作り話かと思われる方も少なくないだろうが、この話をする時、いつも祖母さんは、涙を流していた・・・・・・。
その涙は到底作り話で孫を困らせるための嘘泣きには見えなかった。

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