7月の終わり、夏休みに入ったばっかの頃に男だけ5人でキャンプに行った。
場所は富士五湖の一つ。
初日の夜はかなり遅くまで飲んで俺はひどい二日酔いになり、皆が釣りに行くというときも、一人貸しテントで寝てたんだよ。
昼近くなってやっと少し気分がよくなって、湖岸の道を仲間が行ったほうへぶらぶら歩いてった。
15分ほど歩くと、だいぶ汗が出て頭痛が治まってきた。
右手が湖で、中に向かって板が張り出してるとこがあった。
舟が着けるようなもんではなく、釣用の足場みたいなもんだ。
そこに人がいたんだが、変なやつだったんだ。
50過ぎくらいのおっさんで、上半身は裸、下半身に晒をぐるぐる巻きつけてた。
こう書くとお祭りのときの格好みたいだが、そうじゃなく、その晒が尻のところが盛り上がって、そうだな、コントに出てくるアヒルみたいだったんだ。
わかるかなあ、尻だけぼこんと突き出てたんだ。
おかしい人だと思ったから見るのをやめようとしたが、向こうがこっちを見て目が合ってしまったそしたらおっさんが叫んだんだ。
おっさん:「アンちゃん、ちょっと待てや30分で5万やるから手伝ってくれ」
かまわず行き過ぎようとしたら、おっさんが走ってきて俺の右手をつかんだ。
俺:「ちょっとやめてくださいよ」
振り払おうとしたが力がかなりち強かった。
おっさんは俺の手をつかんだまま、晒からヘビ革の財布出して、そしたらすげえ分厚かったんだよ。
おっさん:「じゃあ10万出す、出すから行かねえでくれよお」
泣きそうな声になったんで足をとめ「どういうことですか」って聞いたら「なあに、あと10分ほどしたら俺の両手つかんでてくれればいいだけだから、変な格好してるがホモ関係じゃない、それは誓うから、人助けだと思って」と。
10万というのはさすがに気が引けるので、「わけを説明してください」って言ったんだよ。
そしたら「わけはちょっと言えねえが、これ見たらわかる」って、そう言って俺の手をつかんで藪陰に引っ張っていき、残った片手で晒をほどき始めたんだ。
「やっぱホモか?」と逃げようとしたら、それを察したのか「ホモじゃねえったら!!」と絶叫した。
で、俺に財布ごと押し付けてきた。
おっさん:「アンちゃんが好きなだけ取っていいから、頼むもうすぐ来るんだよ」
俺:「わかりました、わかりましたよ、できることならやってもいいです」
こう答えると「ありがてえ」と、どんどん晒をほどいてって・・・。
したら尻の後るがあらわになったとき、俺は「あっ!」と叫んでしまった。
尻たぼの間からでろんと長いものがこぼれたんだ。
長さ40cm、太さ10cmはあったな・・・。
色は黒に蛍光グリーンの太い筋でうねうね動いてた。
ヒルか何か、生き物に思えたが、そんなヤマビルはいないよな・・・。
おっさん:「これ見えるかアンちゃん、寄生虫だよ、しかも生きたもんじゃない」
おっさん:「でもよ、触ることもできるし、このままにしてれば内蔵までいってしまう。わかるか、呪いなんだよだからこの場所に解きにきた」
俺:「???意味わかんないですよ、その虫みたいなのは見えます医者行ったほうがいいんじゃ」
おっさん:「ダメだ、医者は糞の役にもたたん。ああ、もうくる時間だ」
俺:「くるって何が?」
おっさん:「魚に決まってるだろ、ここは◯◯湖だぞ回遊する時間が決まってるんだ」
ますます訳がわからんかった・・・。
おっさん:「いいから、俺がこの板の突端に向かって尻を出すから、もってかれないように両手を引っ張ってくれればいいんだよ。それだけで財布の中身全部やる」
こんなことを言い合っているうち、湖の中央のほうに白い波が立つのが見えた。
おっさん:「あああ、来た」
おっさんが後ろを向いて湖に突き出し、そのヒルみたいな生き物がにょーんと水の上に出た形になった。
おっさん:「俺の両手を強く引いてくれ。アンちゃんも踏ん張ってなじゃなきゃ俺まで食われる」
水面の波はかなり高くなり、あきらかにこっちに近づいてきてる。
俺は言われたとおり、両手でおっさんの手首を握って板の上で踏ん張った。
そしたら・・・信じられないかもしれないが、水の中に巨大な魚の口を開けた顔が見えた。
軽トラックを正面から見た大きさだよ。
怖くはなかったな。
魚の顔を前から見るとなんとなくユーモラスなんだ。
それがどんどん近づいてきて、バジャーッと水が跳ね上がり、飛び上がった魚が、おっさんの尻の後ろで口を閉じたんだバフッという音がした。
一瞬、引っ張り込まれそうになったが、おっさんの体を通して何かが抜けた感触が伝わってきて、俺はおっさんごと尻餅をついた。
そのまま魚は体を反転させて水に落ちたが、口の端におっさんの尻にあったヒルを咥えてるのがわかった。
おっさん:「あああ、抜けた・・・助かった」
おっさんが歓喜の声をあげ、魚は潜って見えなくなった
ま、こんなことがあって結局20万もらったんだよ。