そこそこ有名な廃墟

地元ではそこそこ有名な廃墟があるんだが、実際に行ったことはなかったので俺、H、Kの3人で肝試しに行った。

3人とも、幽霊はおろか金縛りにも縁は無かった。
そのくせ3人とも妙にビビりなので、誰が言い出した訳でもなく、昼間に行く事になった(夜はDQNが多いという情報もあり)。

昔の別荘地か何かの一角だったらしいが、今ではほとんどが伸び放題の草木に飲み込まれている。

他の建物は取り壊されて土台だけしか残っていないのに、目的の廃墟だけが取り壊されずに残っているのは、何か「いわく」でもあるのだろうか・・・そんな話をしながら、車を降りて数百メートルの道のりを草を掻き分けて進むと、その「物件」があった。

想像していたより大きく、そして想像以上にボロボロの建物だった。

窓にはガラスは無く、スプレーであちこちに落書きがされていたし、一部屋根が崩れていた。
夜に来ていたら、不気味すぎて建物の中に入ろうなんて思わなかっただろうと思う。

しかし真夏の日中の明るさと賑やかに鳴いてるセミの合唱のせいか、ぜんぜん怖くはなかった。

なんて事ない、ありきたりな廃墟。
家具などはそのまま残されていてひどく荒らされていたけど、当時はさぞかし綺麗な建物だったろう。

せっかく来たんだし一通り廻ってみるかという事で、二階から探索を開始した。
が、ところどころに他の侵入者が踏み抜いたと思われる穴が床のあちこちに開いていた。

あっさり二階は探索中止(ヘタレですまん)。

一歩一歩、床の感触を確かめながら慎重に一階を廻ってみる。

荒らされてはいるが、これを所有していた人物は当時相当羽振りが良かっただろう事が伺える。

朽ちたソファーや食器棚などの家具がいちいち高そうだったから。
なんて事ない、ありきたりな廃墟。

・・・のはずだった。

「うおぉっ!」と突然Hが声を上げた。

振り返って見ると、後ろを歩いていたHが床板を踏み抜いていた。

俺とKは腹を抱えて笑った。

Hは慎重に穴から足を抜くと、自分の開けた穴を覗いていた。

俺は腹が減ってたし、鬱蒼とした廃墟の雰囲気がそろそろ嫌になってきていた。

「怪我する前にそろそろ帰ろうぜ」とHに言うとHは「ちょっと待ってくれ」と言い、ポケットからペンサイズのマグライトを取り出して穴の中を照らし始めた。

コイツの準備のよさ、何なの?と思っていると、「下に何かあんの?」とKが言った。

Hは「ん・・・何だ?・・・部屋か・・?うん、下に部屋があr・・・!」

不意に、Hの言葉が止まった。

K:「どうした?何か見つけた?」

Hを見ると、下を覗き込んだまま動かない。
何も言わない。

コイツ、また俺らをお驚かそうとしてるなと思ったんだが、近づいてみてすぐそうじゃない事がわかった。

Hはすごい量の汗をかいていて、小刻みに震えていた。

全身が硬直しているという様子で、口からよだれを垂らしていた。

「おい!おい!しっかりしろ!」と揺さぶっても反応しない。

次の瞬間、震えはさらに大きくなり、「カッ!・・・カハッ!」と、まるで首を絞められているかのように喉から息が漏れる音がした。

Hは完全に白目を剥いて、口から泡を吹き始めた。

穴の中から、ボソボソつぶやいてるような声が聞こえた。

K:「ヤバイぞ、早くここを出よう」

そう言うとKはHを担いだ。

俺もKも顔面蒼白だった。
床板を踏み外さないように慎重に、素早く歩いた。

出口が物凄く遠くに感じられた。
後ろから何か得体の知れないものが迫ってる気がして、泣きそうになった。

建物を出ると、あれほどやかましく鳴いていたセミが、嘘みたいに静かになっていた。
藪の中を、死に物狂いで走ってようやく車にたどり着いた。

峠を降りて町に近づく途中で、Hの意識が戻った。

Hは泣きながら、しきりに「助けて、助けて」と「寒い」を繰り返した。
そのまま俺らは麓のお寺へ向かった。

何故か、病院よりもお寺に行く方が正しく思えた。
・・・寺での事は人に話すなと住職に言われたので端折ります。

とにかく、Hは無事に戻ってきた。

で、Hが何を見たのか?

泣きながら、震えながら、Hが一度だけ話してくれた。
穴を覗きこむと、下に空間があるのがわかった。

ライトで照らすと、そこは地下室のようだった。
床にネズミと思われる小動物の骨が大量に散乱していた。

その時、ライトの光の中を何かが横切った。
その瞬間、金縛りに遭ったように動けなくなった。

”ソイツ”はライトの光の中にゆっくり入ってきた。

真っ白な皮膚でガリガリに痩せた、男か女かは判らないが裸の人間のようだった。
なにかボソボソとつぶやいているようだった。

ボサボサの髪の毛がまばらに生えた頭が、ユラユラしながら穴のすぐ真下に来た。
ソイツはゆっくりと顔を上げた。

顔はしわくちゃで、目は閉じていた。
その目がゆっくりと開いた。

白目や黒目の無い、血の塊のような真っ赤な目。

そして、憎悪むき出しの表情でHの顔を見上げた。
それを見た瞬間に、息ができなくなった。

そこから先は覚えていない。

俺もKも、ソイツの姿を見てはいないけど、あの、ボソボソと何かをつぶやく声は今も覚えている。
ちなみに俺やHの身には別に特別な事は起きていない(今のところ)。

あれから4年経つけど、いまだにHは時々お寺に通っているらしい。

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