その書物には殺し方が書いてある

カテゴリー「怨念・呪い」

知り合いの話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。

随分と深い山奥の邑で、奇妙な古物を売り付けられそうになった。
古い古書のようで、その昔、遙かに離れた平野部から持ち込まれた書物だそうだ。

売り主の老爺:『あんた、その筋に顔が広いだろ。儂らには意味のないモンだが、欲しがる奴がどこぞにいるかもしれん』

売り主の老爺はそう言ってきた。
中を改めさせて貰ったが、とても彼が読めるような物ではなかったらしい。
ただ図が簡略ながらも併記されていたので、生薬や土をある溶液に混ぜ溶かして、何か薬の類を作るのであろうとは想像がついた。

最後まで読み進めて首を傾げた。
内容物を漉して取り上げるところで記述は終わっている。
それをどうやって薬の形にするのかは記されていない。

知り合い:「最後は尻切れトンボですかね?」

そう口にしたところ、あっさりと否定された。

売り主の老爺:『違う違う。漉して残った物は単なるゴミだ。これは薬を作るんじゃなくて、ある特殊な水を作る為の手引きなんだとさ』

知り合い:「なるほど、用があったのは上澄みの水でしたか。どんな効能があるのです?」

売り主の老爺:『これを畑に撒いてから作物を作るだろ。そうやって作られた物を食べると、○○邑出身の者だけが死ぬんだと。他の邑で生まれ育った者には、まったく何の効果も無いそうだ』

知り合い:「・・・それって本当でしょうか?」

売り主の老爺:『さあな。そう伝えられているだけだから、詳細は知らない。大体、○○邑ってのがどこにあるのかも皆目わからんし。どうかね、やっぱり金にはならんかね?』

確とした返答は出来なかったそうだ。

知り合い:「もし書かれていたことが本当であるなら、恐ろしいことです。身体を構成する何らかの条件を狙い撃ちする薬効、そんなものが作れるということになりますから。ちょっと呪術めいてますけどね」

数年後、再訪した際にもう一度見せてほしいと頼んでみた。
しかし古書は既に売られていたのだという。

どこの誰が買っていったのかまではわからないそうだ。

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