中学もまもなく卒業。
高校受験も半年後に控えている、といったタイミングで修学旅行がありました。
この時ばかりは受験間近でいつもピリピリしているクラスメイト等も楽しそうにしていた記憶があります。
さて、自分の家の家系は信仰している宗派と関係ない寺や神社に絶対に入ってはいけない、出来れば近付いても欲しくないと言われ続けていました。
ですから折角修学旅行で京都に来ても、寺や神社と名のつくものには近寄らないように避けてました。
金閣寺なども近寄りませんでしたし、皆が清水寺の中に入っていった時も自分はお土産屋さんで時間を潰していました。
予め先生に話してあったので気を使ってくれて、わざわざ集合写真の場所をずらすなどしてくれました。
ですが、こういったある意味特別扱いをされている自分に対して不良と呼ばれる方々は良い気はしなかったのでしょう。
旅館での食事を終え、温泉に入り終えて部屋でクラスメイトと談笑していたとき不良数人がニヤニヤしながら部屋に入ってきて近付いてくると、自分の背中に何かを貼りました。
それと同時に何か不良が言おうとしたその瞬間でした。
部屋に居た人間、不良数人は勿論、さっきまで談笑していたクラスメイトも自分以外の全員が頭を抱えてうずくまりだしました。
特に自分に何かを貼った人間(以降Yとします)は尋常じゃありませんでした。
痙攣して、嘔吐までしていました。
あまりの出来事に呆気に取られてしまいましたが、すぐに先生を呼んで救急車が何台も来る大惨事となってしまいました。
その後、背中に何か貼られた事を思い出して剥がしてみるとYが自分に貼ったものは御札だったとわかりました。
幸い、自分にお札を貼ったYを含め後遺症が残ったりお亡くなりになったりといったことはありませんでした。
しかし、それが原因でYはこちらに近寄らなくなってしまい同様の被害を受けてしまったクラスメイトは、突然耳鳴りがして立ってられないほどの頭痛がしたとは言ってましたが、それ以上はわからないとの事でした。
何度か話を聞こうと試みたのですが、Yは頑なに拒みました。
そのまま卒業を迎え、無事、高校に進学した半年後の話です。
Yから連絡がありました。
クラスメイト伝手で連絡先を知ったようでした。
半年振りに会ったYはクマがすごい事になっていて、茶髪にはところどころ白髪が混じり、普通に話していても視線は常にキョロキョロしていました。
Yは自分に対して、まずは謝罪をしてきました。
続けて三蔵法師のような格好をしている顔が真っ黒な人がもう一年間あの日から毎晩夢に出てくる・・・なんとかして欲しいと。
自分はそれを聞いてご本尊様だとすぐに気付きました。
祖母に電話を掛けて事情を説明すると祖母には「そんな罰当たりにしてやる事は何も無い。」と言い捨てられました。
その上で「でも、もしお前が力になってやるって言うならSさんに連絡しなさい」とも教えてくれた。
Sさんとは定期的に祖母の家に来るお坊さんである。
紳士的なお坊さんで優しいので自分はかなり好きだった。
自分は正直、何故友人でもないYの為にそこまでしなければいけないのかと思いつつ、Sさんに連絡を取って事情を話したら、その日のうちに都合をつけてくれた。
SさんはYに会って開口一番こう言った。
「おい、お前何しやがった。」
普段はすごく丁寧な口調で話すSさんから発せられたとは思えない言葉だった。
Yは勿論だが、自分も非常に驚いた。
さらにY自身の口から何があったかを説明させるとSさんが思い切りYの頬を張ってこの世には触れちゃいけないものがあってお前はそれに触れた。
今日、明日で解けるものじゃない。
しかもお前は他の神様にも嫌われている、他にも何かやっただろう?というような事を言った。
するとYは、修学旅行の後、先輩に連れられて心霊スポット?に行ったらしい。
そこで連れて行かれた古い神社の一部を壊してこいと言われ、修学旅行の件以来馬鹿にされていたのを払拭したくて壊したそうだ。
それを聞いてSさんはまた眉をしかめたが本気でお前が何とかしたいと考えているなら、しばらくお前は本山にこもる事にになる。
それが数ヶ月か数十年かはわからない・・・と伝えた。
Yは泣きながら二つ返事で頷き、その次の日には引き取られそれ以来Yの話を聞くこともなくなりました。
不可抗力とは言えそんな事があって自分はますますお寺等に近付けなくなりました。
以上が私の話です。