俺の体験談。
俺は小中学生の頃、ド田舎に住んでいたんだ。
田舎だからもちろん畑もあり、森もあり、自然が広がるまさに「緑の町」だ。
当時14歳だった俺はその森の中でよく友達と遊んでいた。
森とは言ってもそこまで深い森でもなく、生い茂る木々の隙間から日差しがさしているためとても明るく幻想的な森だった。
空気も綺麗で子供の頃の俺らにとってはいい遊び場だった。
そんな森にでも一つだけ不思議なことがあった。
立ち入り禁止区域があることだ。
なぜそこが立ち入り禁止なのか、小さいころの俺らにはよくわからなかった。
親には「あそこには絶対に入るな」と小さいころから言われていたため、入ろうとは思わなかった。
あのころは特に気になりもしなかったしな。
何より大人でさえ入ることを拒む区域だったから、小学生の俺から見たら恐怖その物だったんだ。
学校でも幽霊が出るっていう噂もあったし、あの時はこの先、あの区域に入ることはないだろうと思っていた。
しかし、それは突然やってきた。
俺たちの最高の遊び場だった森で遊べなくなったのだ。
俺たちは激怒した。
「なんで森で遊べないのさ!?」
「意味わかんねー」
「俺たちどこで遊べばいいの?」
俺の近くに住む友達ほとんどがこういうことを言っていた。
結局森で遊べなくなり、俺らは毎日ゴロゴロして過ごすしかなくなった。
家で遊ぶのもなぜかダメだった。
なぜかはわからないけど。
森で遊べなくなって2週間位立った時だったと思う。
A(友達)が「俺らで森に行ってみようぜ?」って言ってきた。
俺は森で遊べなくなったのが気に入らなかったし、なんで森で遊べなくなったのか知りたかったからというのもある。
だが一番好奇心に押されて「ОK!」と返事をした。
そのあとにBとCも誘い計4人で森に行ってみることにした。
次の日に俺の家の前に集まって作戦会議をした。
勿論ただ入るだけなのだが、子供の頃はそういう組織的な物に憧れていたため作戦会議を開いたんだと思う。
A「まず何を持っていく?」
俺「サッカーボール!」
A「遊びに行くんじゃないんだぞ!」
俺「えーーーー」
C「じゃあ虫網!」
A「OK」
B「じゃあサッカーボー」
A「うるさい黙れ」
結局こんな会話になってしまった。
ちなみに森の中は広場みたいになってある所があり、そこは結構広くてサッカーなどができるようになっている。
立ち入り禁止区域はそこから右に500メートルくらい進んだとこにある。
看板みたいのが立っていて「この先入るものを拒む」って書いていた。
森に入るのは次の日の午前11時になった。会議を開いたのは土曜日だったから森に入るのは日曜日。
夜は怖いし、昼なら明るくていいだろうということになった。そして今日が日曜日。ワキワキウキウキが止められなくなっていた。
「おいーっす」
A達が来る。
A~Cは固まって集合場所の俺の家の前に来た。
俺「じゃあ行くか!」
俺らは森に向かって歩き出した
俺の家と森は案外近く、徒歩10分で着く。
俺の家を集合場所にしたのもそれが理由だ。
森の前につくと。見慣れた看板があった
「この先入るもの拒む」
禁止区域と同じ看板だった。
だが禁止区域にある看板とは違ってまだ錆びてもいなく、ここ最近に作られたっぽいものだった。
一瞬戸惑ったが決して禁止区域ではない、2週間前まで俺たちが遊んでいた森だ。
そんな気持ちが強く結局全員中に入っていった。
中はいつもと同じ普通の森だった。
A「久しぶりだ、、、」
C「超感激ww」
俺「つかなんでここって遊べなくなったの?」
A「いつもと変わんない森なのにな、、、、なんでだろ?」
B「もしかして、、、俺たちの親がやったのかも!」
B以外「なんで!?」
B「俺らが遊んでばっかいるから、、、」
俺「でもそこまでする必要ないだろ?」
C「確かに」
なんかこんな感じで討論?みたいになった。
でもCが「せっかく森に来たんだから遊ぼう」っていうことで結局サッカーして遊んだ。(サッカーボールは会議の時に持ってきてもいいということになった)
時間は多分6時を超えている。
真夏だったため日が落ちるのが遅く、まだ明るかった。
森に来たのも久しぶりで、時間も忘れて楽しく遊んでいた。
C「楽しかったなww」
俺「やっぱ森で遊ぶの最高だわ」
A、B「確かに」
こんな会話をしながら休憩してたんだ。
A「じゃあ帰るか」
Aがそう言った瞬間。
とっさにこの言葉が口から出た。
俺「まだ遊ぼうよ」
いくら真夏で日が落ちてないとはいえ、親が心配するのもわかっていた。
だけどまだ森にいたいという気持ちが強かった。
それはCもBも同じだったらしく「まだいいじゃん!」などと俺と一緒になって言っていた。
仕方がなさそうな顔をしてAも「わかったわかった」と言ってくれた。
森でまだ遊ぶとは言えサッカーも飽きたし、ほかに道具も持ってきてない。
あるのは虫網みくらいだが、今はそういう気分ではない。
俺らは何をするか考えた。
10分ほど考えて何も思いつかなく。
やっぱり帰るかという話になってきたところで「禁止区域いってみない??」と、Bがそう呟いた。
最初はビックリした。
俺「怖いし行きたくない」と返した。
だがA、C「「行こうぜ!!!」と押してきた、「いやだよ、、、」と返すが皆の気迫に押されてしまいOKしてしまった。
ここで禁止区域の詳細を教えておく。
まず禁止区域は先ほども言ったがサッカーができる広場の右に500メートル進んだところにある。
禁止区域だけ大人も入る事が出来ないため、草木がボーボーに生えていて、そこから先は結構暗く、ひんやりとしている場所である。
当時の噂では「ずっと奥に進んだところにお墓がある。誰かが集団リンチに会って殺された」などがあった。
だが誰も入れなかったため詳しいことはよくわからないところであった。
危険区域の前についた。
多分着いたときは6時20分とかその辺。
森とは違う何か変な威圧感があった。
まるで看板の先は別世界のような、そんな感じだ。
それに構わずAがズンズンと奥に入っていく。
それに続いて俺らも入っていく。
A「何があるかな?」
C「しらねぇよ、噂通り墓とかあるんじゃないか???」
俺「、、、、」
B「おい、◯◯(俺の名前)なんか暗いぞwそんなに怖くないだろwww」
その時に沸いているのは「怖い」という感情ではなかった。
何物から見られている。
そんな威圧感を感じ「不安」を感じていた。
C「オイちょっとお前等止まれ」
いきなりCが少し怒り口調でいったのだ。
B「どうした??蛇でもいたか??」
そう聞き返した。
だがCの口から出た言葉は俺たちの予想を超えた言葉だった
「誰かに見られている」
一瞬その場が静まり返った。
空気が重い。
誰も口を開かない中。
俺は言った「俺もさっきから誰かからの視線を感じる」
実際俺も先ほど書いたように何物からか見られている威圧感を感じていた。
だがここでAが反論する。
A「でも俺気づかなかったぞ?お前等の勘違いじゃないか?」
B「そうだってwまったくCはビビリだなwww」
C「「絶対に見られている!!」」
Cがいきなり怒鳴った。
俺はこの会話に完全についていけなくなっていた。
AもBもCが初めて怒鳴ったところを見て、少し怖気着いたようだ。
普通だったらここで走って全員で森を抜けるだろう。
しかし見られてるという恐怖で後ろを振り返ることができなかった。
A「、、、どうする?」
B「わかんねぇよ、、、」
俺「、、、」
B「C、俺らはどうしたらいい?
C「わかんない、、、、」
Cは昔から頭がキれたが、今回ばかりはどうしようもない。
何故か俺たちはさらに奥へと進んだ。
今でもなぜなのかはわからない。
もはや先ほどまでの冒険心はなくなり、残っているのは「恐怖」だけであった。
どれだけ歩いたかわからない。
今は何時だろ。
みんながそう考えていた。
あの後一言も会話がなく、俺らはただ歩いていた。
少し日が沈み始めている。
所々の隙間から見える真っ赤な夕日が森を不気味に光らせていた。
C「、、、どうしてこんなことになったんだろう」
ボソッとつぶやいた。
「お前のせいだよ!!!!」と、BがAに向かって言い放った。
「なんだと!!!」
AがBに殴りかかる。
俺「やめろって!!やめろよ!!」
C「今はそんな場合じゃない!!!」
二人係でAとBを止めた。
二人とも冷静を取戻し仲直りもした。
だが問題は山積みだ。
さらに奥へと進んだ。
先ほどまでの「森」ではなく違う他の「森」のようだった。
この森がこんなに深いということを初めて知った。
それとは関係なくあの視線と威圧感はまだ消えていない。
寧ろ強く感じるようになっていた。
そして、とうとう着いてしまった。
恐れていたことが起きた。
最深部に着いてしまったのだ。
森を抜けたその先には大きな湖があった。
透き通るような水が流れており。
これもまた神秘的だった。
だがその場にいた俺らはそんなことを考えている暇はなかった。
最深部に着いたということはもう逃げる先がない。
ここで見られてるやつに襲われたら間違いなくやられる。
あたまの中は「恐怖」でいっぱいだった。
戻るにも暗くて戻れない状況、どうしたらいいかわからなかった。
湖について1時間はたっただろう。
もう日はほぼ完全に沈んでいて、たまたま持ってきていた懐中電灯が命綱だった。
いつ襲われるかわからない。
どうすれば助かる、考えに考えいた末に「助けを待つ」結果になった。
この時点であくまで視線を感じているだけであり、決して危害を加えられたワケではない。
またもしかしたらCと俺の勘違いという可能性もあったため、それが賢明だという結果になった。
次の日になったら森を抜けようということだった。
当時C以外はバカだったからこのような結論に至ったのだろう。
湖について3時間は経過した頃、腹も減り色々とボロボロだった。
9時ごろにはもう寝てる俺にとってはかなりつらいものだった。
眠いが寝てる間に襲われたら・・・。
そう考えて俺は起きていた。
A、Bはもう疲れ切って寝てしまい、Cは起きていた。
寝るにはちょうどいい岩があった。
AとBはそこで寝ていた。
Cはうつらうつらしているが無理をして起きている、俺と同じような状態だった。
だがその耐え作業も長く続かず、俺らは寝てしまった。
今何時だ。
恐らく夜中であろう。
俺たちは全員同じ時刻に目を覚ました。
それには理由があった
「歌」
意味のわからない歌が聞こえる。
民謡かなのか何なのかわからないが、その歌を聴くだけで何もかもが嫌になる。
そんな歌だ。
俺たちは全員放心状態になっていた。
何もできない。
ただ歌を聴いていて死にたくなる。
それだけであった。
「ヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタ」」
何かが歩く音が聞こえた。
その正体はすぐにわかった。
水面の上を誰がが這っている。
あれはなんだ?人間か?人間は水面を歩く事はもちろん這うことなんてできない。
ではなんだあれは?
頭がパニックになった。
その歌はそいつが歌っているようだ。
そして気づいた。
アイツは何かを探している。
目が見えないのか?まるで匂いで何かで察知しようとしているようだ。
俺たちはその化け物に恐怖を感じた。
A「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ」
Aが叫んでしまった。
そいつは首を180度回転させこちらを見た。
顏は白髪で目が黒く、皮膚が剥がれ落ちまるで鱗のようなものが出ていた。
手は5本あり、上半身は百足のようで下半身は尻尾。
まるで絵に描いた「化け物」のようだった。
いや、化け物だった。
そいつがこちらを見るなり
「ミイツケタァ」
そう呟きこちらへと向かってくる。
5本の手をうまく使いすごい速さでこちらに迫ってくる。
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
俺らはも今までにないとてつもない恐怖を感じた。
そして全員で逃げた。
どう逃げたかはわからないが、それぞれ最善の方法でバラバラに逃げたのだと思う。
気が付いたら俺らは森を抜けていた。
バラバラに走ったが4人とも全員無事だったのだ。
「A!!!!」
Aの母さんが駆け寄ってくる。
「おーいいたぞ!!!!!こっちだ!!!!!!」
近くの店のおじさんもこっちに駆け寄ってくる。
俺らは戻ってきたんだ。
そう安心した瞬間泣き崩れてしまった。
ほかの三人も全員泣き崩れていた。
全員の親が集まった後に重大の事があった時などにだけ使う会議場らしきところに連れて行かれた。
そこは普段はほとんど人が立ち寄らず、本当に重大なことがあった時だけに使われる場所だった。その時はもう夜中の1時を超えていた。
「何があった。すべて話してみろ」
なんかお坊さんみたいな人がそう訊いてきた。
その時には俺ら全員冷静さを取戻し、ちゃんと話すことができた。
そして俺らはすべてを話した。
森に入ったこと。
禁止区域にはいったこと。
誰かの視線と威圧感を感じたこと。
最深部の湖についたこと。
湖で見た化け物の事。
すべてを話した。
「、、、、、、、、、、、、、」
お坊さんが固まる。
この後に出た言葉は衝撃的だった。
「お前等、欲魔羅を見たんだ」
欲魔羅ってなんだ??
一瞬パニックになったが、
「どんな姿だった?」
お坊さんのこの言葉でハッとなり。
「顔はまるでうろこの生えた老婆で!!!胴体は百足みたいな感じで下半身は尻尾になっていた!!!!!」
少し興奮気味で泣きながらAと俺が説明する。
BもCもまた泣いていた。
俺はなぜか泣けなかった。
坊「歌は聞いたか?」
B「ききました」
坊「そうか、、、どんな感情になった?」
C「とにかく何もしたくなくなり、死にたくなりました」
坊「、、、、」
お坊さんは固まってしまった。
そして少し時間が流れ。
すべてを話してくれた。
あの『化け物』は『欲魔羅』というらしい。
あいつは怨念の塊で、すごく強い力を持っているそうだ。
奴が歌っていた歌は昔、人を殺すために歌われた『呪いの歌』で聴いただけで死にたくなったのはその影響らしい。
欲魔羅は基本的に湖にしか現れないらしい。
地縛霊というわけだ。
でも禁止区域から視線を使い湖まで来させることができるそうだ。
俺たちが感じた視線もその視線だろう。
顏にある鱗は取り込んだ怨念の数を表しており、5本の手は欲を表しており、下半身の尻尾は魔を表しているらしい。
これが名前の由来だろう。
昔は魔羅螺ン馬とも呼ばれていたが、今は欲魔羅と呼び人がほとんどだそうだ。
欲魔羅は目が見えず、鼻もあまりよくないらしい。ただ聴力だけがすごいそうだ。
Aが叫ぶまで見つからなかったのはそれまで音を立てていなかったからであろう。
欲魔羅が生まれた理由は一つの裏切り。
俺の村に昔誰かが火をつけていき、大火事が起きたそうだ。
村人の半数が死に壊滅状態。
もうボロボロだった。
そんな中、半数死んだ村人のすべての恨みが合体し、産まれたのが「欲魔羅」だと。
大火事で死んだからかわからないが、必ず欲魔羅は湖にしか現れない。
昔の欲魔羅は人を殺さなかったらしい。
とはいっても村人だけだ。だが村人とは妖魔羅を激しく嫌った。
ある日、村人はある霊能力者に欲魔羅を倒すようにと依頼を出したのだ。
欲魔羅は強すぎるため、その霊能力者にも倒せなかったらしい。
だがそこが問題ではなかった。
欲魔羅は「村人」に裏切られた。
その悲しみと憎しみにより「欲」が生まれ五本の手が生えたらしい。
それから欲魔羅は人を次々に殺していく、その怨念や恨みを取り込んだ。
それが顔の鱗となって表れているらしい。
そして現在に至るそうだ。
その場でみんな固まってしまった。
まるで神話のような話だ。
しばらくたってから「さあ、お祓いをして帰ろうか」と声をかけられ、こうして僕たちはお祓いをされ、「二度と森にはいかない」ということを約束して帰った。