たぶん奈良時代。
山のふもとの村に猟で生計立ててた若者がいた。
若者は母親と2人で暮らしてたんだが、母親がその日ちょっと具合悪かった。
で、「よーし今日は大物狩って母ちゃんに元気になってもらうかー」って感じで張り切って家を出たのよ。
若者が狩りに行く時に、いつもお供に連れてく犬がいて、その日ももちろん連れてった。
で、山の奥の方に入ってくと犬が何かを発見したみたいで、若者がそっちを見るとめっちゃ大きな鹿がいた。
若者は「こいつは上物だ、きっと母ちゃんも喜ぶぞ」って喜んで、鹿に気付かれないようにそっと近づいていった。
もうちょっとで鹿に飛び掛かれる・・・そしたら手元のナタで・・・ってところで、いきなり足元にいた犬が狂ったように吠え出した。
当然鳴き声に驚いた鹿は逃げる、それを見て若者ブチ切れ!
若者:「お前のせいで獲物に逃げられたじゃねーか!」
そう叫んで持ってたナタで犬の首を切った!
切られた勢いで宙を舞う犬の首。・・・。
でもよく考えてみると何かおかしい・・・。
いくら勢いよくてもそんな遠くまで首が跳ぶものなのか、しかも変な方向に向かって。
そんな事考えてると犬の首が落ちた茂道から何かが出てきた。
蛇だった。
それもさっきの鹿なんか比べものにならんくらい巨大なやつがこっち睨んでる。
若者:「あ、俺死んだ」
直感的に思った若者だけど、なんか大蛇の動きがおかしい。
よく見ると首だけになった犬が蛇の喉元に噛みついてる。
それで、若者は睨まれた時に腰抜かして動けなかったんだけど、蛇は犬に噛まれて、のたうちまわって若者に対しては何もできない状態。
しばらくすると大蛇がドシーンって音立てて地面に倒れて動かなくなった。
犬の首も蛇から外れて地面に落ちた。
若者は、自分を助けてくれようとした犬を、感情に任せて殺してしまった事を後悔して、犬の首と体を持ち帰ってきちんと供養した。
「この言い伝えからあの山は犬鳴山と呼ばれるんじゃよ」
俺の地元じゃ有名な話。