サルガッソー海
メキシコ湾流、北大西洋海流、カナリア海流、大西洋赤道海流にと言う海流の流れに囲まれた長さ3000キロ以上、幅1100キロ以上になる海域。
これらの海流が時計回りに回って巨大な渦を作っているため、この海域は潮の流れが無い状態となり、あらゆる浮遊物が流れ込み滞留している。
特に数百年にわたってサルガッスムと呼ばれる海藻類が密集してそれらが絡み合い、潮の流れのない無風状態が続くとそれらが半液体状になるまでになってしまい「粘りつく海」ともよばれることがある。
帆船の時代はまさに魔の海域であった。
もともと風の弱い亜熱帯に属しているうえに、潮の流れも無くなるとその粘りついた海からに足をとられた帆船は、数週間は身動きがとれなくなるということが常だった。
船乗りは乗員の食糧保全のため、飼料を消費する積荷の馬を捨てる、あるいは食べてしまわなくてはならなくなるので「馬の緯度」と呼ばれ忌み嫌われた。
この海で風に恵まれず立ち往生してしまうと、何週間も動けずにいる間に船体に海藻が絡みつき、風が吹いたときには既に動けない状態になってしまっていることがあったという。そのため船乗り達は水と食糧の不足でしばしば全滅したという。
船員が死に絶えて無人となった船は、無人のまま長い間この海域を彷徨うことになる。
やがてはしだいに朽ち果ててゆき、最後には海藻に付着して一緒に流されてきたフナクイムシに船体を食い荒らされて沈んでいくという。
現在でもこの海域は、小型の船舶にとっては危険でサルガッスムがスクリューに絡まってしまうとそのまま動けなくなることがあるという。
そうなると自力で脱出することは厳しくまた岸に流れ着くこともない。
何らかの事情で救難信号を発することが出来なければ、船は乗組員が死に絶えた後も
そのままその海域を漂い続けていることになるという。