「TheHandsResistHim」という題の絵画は、米国カリフォルニアの画家であるビル・ストーンハム(BillStoneham)によって1972年に作成されたもので、呪われた絵として知られている。
無表情で佇む少年と眼球の無い少女の人形。
二人の後ろにはガラス張りのドアがあり、無数の手が描かれている。
アーティストによると、絵の男の子は5歳の時の自分がモデルであり、後ろのドアは現実世界と夢想の世界の境界線を、少女の人形は男の子に付き添うガイドを表している。
絵が世間にお目見えしたのは1970年代初頭、ビバリーヒルズのギャラリーで展示された。
そして展示期間中に俳優のジョン・マーリー(JohnMarley)によって購入され、マーリーが最初の所有者となる。
再び絵が世に出回ったのは2000年2月のこと。
米国の競売ウェブサイト『eBay』上に出品された。
出品者の作品情報によると、俳優マーリーの死後まもなくして、古い醸造所の跡地で絵が捨てられており、それを見つけたカリフォルニアのとある夫婦が所有したという。
オークションの出品者はその夫婦(匿名)で、彼ら説明によると絵は呪われていると言うことだった。
なんでも、夜になると絵の中の人物が動き回り、ときに絵の中からキャラクター達が出てきて部屋の中を歩き回ったという。
夫婦は拾ってきた絵を当初娘の部屋に飾っていた。
すると、娘は「絵の中の二人が戦っている」、「夜になるとキャラクターが絵を抜け出して部屋に入って来る」と不思議なことを訴えた。
夫は早速、人や物の動きを察知して撮影するカメラを仕掛けて、3日間絵を撮影させたところ、男の子のキャラクターが脅えた様子で絵の中から出て来る写真が撮れたという。
その写真は競売サイト上に投稿されて、写真を見た人々は、実は少女の人形が握っているのは銃で(実際にはワイヤー付きの乾電池)、男の子が銃で脅されて絵から抜け出しているのでは?と想像を逞しくした。
これが評判を呼んで『呪いの絵が競売に』という触れ込みで、インターネット上で一気に広まった。
恐ろしい噂が作品への関心を集めたためか、絵は199ドルからスタートして102500ドルで落札された。
落札者は絵画の作者であるストーンハム氏に連絡を取り、絵に纏わる幽霊談やオークションの経緯を話すと、作品への歪んだ解釈や偏見に大変驚いていたという。
そして作者は、単なる偶然の一致に過ぎないという前を置きして、こんな裏話を教えてくれた。
「TheHandsResistHim」が最初に展示されたギャラリーのオーナーと作品を批評したロサンゼルスタイムズの芸術批評家が1年以内に他界したということだ。
作者曰く、「二人の死はまったくの偶然だと考えているが、自分が描く絵のいくつかには他者と共鳴して深層心理の扉を開くことがある」とのことである。