残業が終わると、時計は深夜2時を回っていた。
その日は会社に誰も残っていなかった。
左側のエレベーターのボタンを押した。
階数表示ランプが静かに点滅する。
35・・・30・・・25・・・
私の会社のある20階までは少し時間がかかる。
エレベーターの扉が開いた。
この時間帯にしては珍しく、人が数人乗っていた。
私は壁によりかかり、半ば眠りながら1階に到着するのを待っていた。
不意に軽い振動があり、無言のエレベーターは途中の13階で止まった。
私以外の人間はそこで降りた。
私も反射的に降りかけたが、ふと思いとどまった。
帰りのタクシーの中で、あることを思い出した。
左側のエレベーターは、5の倍数となる階でしか停止しない筈だった・・・。