あの場所で飲んだ水の真実

カテゴリー「都市伝説」

「やることないね」

小学生6年の夏休み。
家でゲームをすることに飽きた僕たち四人は、小学生のくせに暇をもてあましていました。

「半年前くらいにさ、理科の授業で断層を見にいったじゃん。あそこでロッククライミングしない?スコップとか縄とか持っていってさ。」

当時の僕たちの遊びといえば、ゲームか近所の公園でサッカーばかりでしたので、このアウトドア的な発想はとても斬新で、子供心にとても面白そうに思えました。

早速、穴を掘るのに使えそうな道具を家から掻き集め、僕たちはその4m程の小さな断層へと自転車で向かいました。

その断層のある場所は、近所の森の中の一角にあったのですが、いざその場所に僕たちが到着してみると、半年前に来たときとは様子が違い、断層の下の土地は、畑にする予定なのか、ほとんど植物が生えていない広場のような状態になっていました。

その広場は植物が生えていないので、水はけも悪く、大きな水溜りがいくつもできていました。

僕たちはスコップやシャベルを使い、その断層を登っていくための穴を手分けして掘っていきました。

そして仲間の一人が穴を伝い断層の頂上へと登ると、縄を断層の頂上の木に結びつけ縄、を穴に沿って下へおろし、断層の上へと登る道が完成しました。

ロッククライミングの道の完成。
それだけでも僕たちは満足したのですが、ある考えが私に浮かびました。

「この断層の上にツリーハウスを作ろう。」

この森の近くには廃材置き場があり、十分にツリーハウスを作る資材は揃います。

この私の提案に皆が賛成したので、断層上の森の中にツリーハウスを作ることになりました。

しかし、その日はロッククライミングの道ができた時点で、すでに夕方になってしまっていたので、この日は帰ることにしました。

次の日、僕たちはさらに釘やハンマーを用意し、資材は縄で断層上まで引っ張り揚げツリーハウスを作り始めました。

ツリーハウスを作っているとき、たびたびこの土地の持ち主に見つかることもありました。

僕たちを見つけると、彼らはいつも狂ったように怒声を浴びせながら、私たちを追い掛け回しましてきました。

しかし、どうやらツリーハウスの存在は彼らには見つからなかったようで、資材を運搬する道を変えながら順調に作業を進めていきました。

そして、一週間もすると簡単な屋根のついたツリーハウスが完成しました。
その時点で、もう夏休みは残すところあと一週間となっていました。

僕たちは残りの夏休みを、そのツリーハウスを拠点に全力で遊んで過ごすことに決めました。

断層の下の水溜りに浮かんでいたカエルの卵を大量に集め、それを透明なビニール袋の中にいれて木に吊るしたり、ツリーハウスの中に作った囲炉裏で焚き木をしたり。
森の中で死んでいたカラスや狸の墓を作ってあげたり。
汚れた手足は断層の下の水溜りで洗い、ツリーハウスの近くに掘った穴の中で用を足しました。

気分は完全に野生児。
断層上の森の中をターザンの如く探検し、服を汚しては両親に怒られました。

そして、夏休みがあと三日となったとき、僕たちは最後の夏休みの思い出として、一日だけそのツリーハウスに泊まることを四人で約束しました。

友達の家に泊まるなどと適当な嘘をついて、各人食料と寝袋や毛布を用意してツリーハウスに集まりました。

やがて夕方になると、森の中は光源がないので、ツリーハウスの中は真っ暗闇になりました。

友達の一人が用意した電池式のランプを点けると、僕たちは話し始めました。

「これからどうしようか。」
「○○神社に行くのはどう?」

この森を抜けた先には、鬼の面を天井に飾っている神社がありました。

僕たち小学生の間では、夜になると鬼の面が体を肉付けして動き出すのだ、一人で行くと頭から食われる、などの怖い話の中心となっていた神社でした。

「よし、じゃあ行くか」

そして、皆で神社に行くと謎の影が・・・となることはなく、友達の「やだよ、怖いよ。」の一言であっさりと流れてしまいまい、そのまま皆黙り込んでしまいました。

夜の森は静かですから、無音と言うものに慣れてはいない僕らは、メンバーの誰かが持ってきていたラジオをつけると、普段は聞かないラジオに聞き入ってしまいました。

やることも無いので、僕は毛布を頭までかぶると、いつの間にか眠りに落ちていました。

朝、目が覚めると、まだ皆は寝ている様子でした。
ふと、僕は以前にカエルの卵を詰め込んだ袋のことを思い出しました。

その袋がどうなったのか気になった僕は、その袋を掛けてある木のもとへ行ってみました。

遠めからその袋を見ると、なにやら袋が沢山のブツブツとしたもので占められています。
近づいてみると、その袋の中には、アルビノのように白くなったおたまじゃくしが大量に詰まっていました。

気持ちの悪い光景でしたが、僕たちがこの袋に詰めたせいでこのおたまじゃくしが死んでしまった、そう考えると、なんだかいたたまれない気持ちになりました。

寝ていた皆を無理やり起こしてその場所に向かうと、僕たちは供養したいその一心で、そのおたまじゃくしを埋める為の穴をすぐそばに掘り、そして僕はそのおたまじゃくしの入った袋を手にとりました。

すると、死んだと思っていた、色素を失ったように目の中まで白いおたまじゃくしたちがぶるぶると体を震わせ、縦横無尽に袋の中を泳ぎ始めました。

生きていたのです。
それを見た僕たちは、あまりの気持ちの悪さと恐怖のあまり、みな絶叫しながら家に逃げ帰りました。

そして、その後ツリーハウスに泊まったメンバーは皆風邪を引いてしまい、そのまま学校を一週間ほど休みました。

当時、僕たちの四人の間では、このおたまじゃくしの一件のことを山の神様が怒ったのだ、鬼の面の祟りだだとかいって馬鹿騒ぎしていました。

今となっては気味の悪いところも残りますが、良い思い出ですね。
でもね、今この話を思い出して僕、ものすごく後悔しているんですよ。

そういえば、その断層の下の広場には看板が立っていたんです。

「高濃度農薬試験場。立ち入り禁止。」

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