昭和62年7月10日のサンケイ新聞の記事:新聞記事の原文より。
小学校で卒業記念にと、子供たちが低学年用プールの底にミッキーマウスの絵を描いた。
低学年の子らは大喜び。
そこへ、ウォルト・ディズニー・プロダクションの社員が現れて「無許可でキャラクターを使われては困る。絵を消して欲しい」とクレーム。
著作権法をタテにした強硬姿勢に学校側は泣く泣く消した。
水泳シーズンを前に日の目を見なかった傑作。
「子供に夢を売るはずのディズニーがそこまでしなくても・・・」と子供たちはがっかりしている。
プールの絵が問題になったのは滋賀県大津市立晴嵐小学校。
今春卒業した男子児童百六人が二カ月がかりで、校舎南側にある低学年用プール(タテ十メートル、ヨコ四メートル、深さ五十~七十センチ)の底に、ディズニーのマスコット、ミッキーマウスとミニーマウスの絵をかきあげた。
それぞれ直径三メートル近い大作で、完成したかわいい絵に在校生たちは大喜びだった。
ところが、二カ月後の五月中旬、新聞のニュースで知った、ディズニーのキャラクター商品を扱う日本ウォルト・ディズニー・プロダクション(千葉県浦安市)の社長が突然現れ「ミッキーマウスの絵を消してほしい」と要求。
「消さなければ著作権法違反で訴える」と迫った。
ディズニーの著作権への強硬姿勢は徹底していることで有名。
年間二千件の無断使用を洗い出し、警察が交通安全運動や防犯運動に使った場合でも、使用を中止させるほど・・・。
林校長は「子供たちが一生懸命にかいた絵。営利目的ではないのだから」と絵を残してもらいように頼んだが聞き入れられず、とうとう六月中旬、泣く泣く塗りつぶして消した。
卒業生や在校生、PTAは突然、絵を消されてショックを受けている。
「著作権の大切さはよくわかるが、そこまで言ってくるとは大人げなさすぎる」との声も出ている。
しかし、ディズニー側は「ミッキーマウスとミニーマウスはわが社の代表的キャラクターだ。無断使用はいっさい認められない。事前に許可を得てからやるべきだった。子供には気の毒だが、他人の権利を知る教訓になったと思う」と話している。
▼文化庁著作権課の尾崎史郎・専門職員の話
「著作権は、登録してある物は無断で使ってはいけない、というのが大前提で、たとえ学校であっても同じ。日本人は欧米にくらべて著作権意識が薄いことが、こうした問題につながったと思うが、実際には営利目的でない限り、事前に許可を得れば使わせてくれるケースも多い」
【後説】
ディズニーが著作権・版権にうるさいことは有名ですが、これには深い理由があると言います。
ウォルトディズニー社も順風満帆で今までやってきた訳ではなく、経営的に厳しい時代を幾度も経験してきました。
その厳しい時代には、キャラクターの版権や著作権を手放す選択にも迫られたと言われます。
しかし、ディズニー側の決断は版権・著作権は絶対に手放さないという方針でした。
キャラクターこそがは利益の源であって、そのキャラクターイメージを維持するために権利は絶対に手放さない、この決断が現在の繁栄に繋がりました。
キャラクターを保護して、イメージを徹底して守る。
これが功を奏して、大きな丸に二つの小さい丸が付いたシルエットを見れば、誰もがミッキーマウスをイメージできるように今日なったということです。