若い夫婦が新婚旅行でフランスを訪れました。
妻が買い物をしたいと言うので、パリから少し離れたとある地方のブティックを訪れました。
妻はしばらく店内を眺めて気に入った服を手に取ると、早速試着すること。
夫は試着室のすぐそばで妻の着替えをしばし待つことにしました。
しばらく妻の着替えを待ちましたが、10分経っても試着室から出て来ません。
夫:「まだ着替えているのか?」
夫が声を掛けても返事がないので、試着室の中を覗いて見ると妻の姿が見えません。
夫:「妻の姿を見なかったか?」
妻の容姿を説明して、その所在を店員に尋ねてみましたが、そんな女性は知らないの一点張りです。
夫は仕方なくホテルに戻り、妻の帰りを待ちましたがやはり帰って来ません。
見知らぬ土地で妻の姿を見失った夫は完全にパニックに陥ってしまいました。
気が動転した夫は妻を探して闇雲に街中を探して回ったのですが、見つかるはずもありません。
翌朝になって冷静さを取り戻した夫は、妻は犯罪に巻き込まれたと考えて警察に昨日の出来事を相談することにしました。
件のブティックで妻が消えたことを話すと、警官は表情を曇らせて、恐ろしいことを夫に告げました。
警察:「なんでもっと早くに通報しなかったんですか!?貴方の奥さんは今頃は中東に運ばれている頃ですよ!!」
妻が消えたブティックはユダヤ人が経営する店で、裏稼業として人身売買に手を染めているという話です。
警察:「奥さんは奴隷として、アラブ諸国に売られて行ったのでしょう。」
絶望的なことを警察官から聞かされました。
ブティックの試着室は店の地下室と通じていて、薬品で意識を失った女性客をそこから店外に運び出すという手口だそうです・・・。
この都市伝説の舞台はフランスのオルレアンのブティックで、背景にはユダヤ人に対する偏見や差別が関係してます。
ユダヤ人や華僑などの社会的少数者は、移住先の地で経済的な成功を得やすいというジンクスめいた話があります。
フランスを例にとると、多数派のフランス人よりも社会的弱者であるユダヤ人の方が経済的には成功しやすいという見方です。
この見方について、同朋との繋がりが強く独自の人脈を持つことや子供の教育に力を入れていることなど、社会的少数者として生き抜くための知恵が商売にも生かされているという説明がなされています。
また、金貸しなど蔑視の対象となる職業を社会的少数者が独占していたことも一因といわれます。
しかしながら、統計的には社会的少数者が飛びぬけて経済的に成功しやすいという訳ではないようです。
移民は商売を行うものが多いものの、その大多数は裕福といったレベルではないといわれます。
少数者の経済的な成功は多数派からは嫉妬と蔑視の目を持って見られるので、「少数者=経済的な成功」という印象付けが起こり易いというのが事実のようです。
そして、『彼らが経済的に成功しているのには何か裏がある』と、人々がそう考えていることもこの都市伝説を産んだ背景となっています。
嫉妬と蔑視を抱いた多数派の人々は、こう考えて自らを納得させているのです。
「あのユダヤ人ブティックが儲けているのは、裏で人身売買に手を染めているからだ」と。
あくまでも都市伝説的なお話です。