夜の山小屋って何故かいつも誰もいないのに小屋の外を人が歩いてる音がする。
でも、たいていは何もないので音は風のせいにして無視していた。
今でもたぶん音なんか気にしないと思うけど、1度妙な体験をしましたよ。
学生時代はどきどき山に1人で行って小屋に泊まったりした。
いつだか、休講が続いたから平日に山に行った。
たまたまか平日だからか知らんけど、小屋に他の登山客いなくて山小屋に一人で泊まることになった。
夜、飯を食ったあとゴロゴロしながら本や小屋に置いてある連絡ノートを読んでいると不意に引き戸が開くようなゴロゴロとした音が入り口の方からした。
山小屋のドアは入り口と風除室があるために俺の寝ているところからは何も見えない。
9時かそのくらいだったかで誰かが入ってくるわけもなく、それに、突風が吹けばそのくらいの音はしてもおかしくはないと思い、特に気にはしないようにした。
一人で寝ていたため聴覚が過敏になったのか、いつもより鮮明に何かが外で蠢く音が聞こえた。
俺は霊感ないけど意外と一人で山小屋に泊まるってのは怖いもんだなと思った。
翌朝、小屋を出ると1つ目の戸が開いていた。
昨夜何かが”いた”のは間違いないけど、そのまま謎にしておくとなんか怖いので、心霊現象以外の原因を探ろうとした。
そこで小屋のまわりを散策していると、何かの骨が草むらから出ていた。
草をかき分けると1体のカモシカのほとんど白骨化した死骸がでてきた。
なんか気味が悪かった。
しかし、このカモシカ、俺に何か訴えたかったのだろうか?
土に埋めればよいのか?
角を掴み頭蓋骨を持ち上げ、カモシカの顔を見ながら考えた。
しかし動物には死んで土に埋めるなどという概念など無いに違いない。
ならば昨晩のカモシカの訴えは、生への執着だろう。
「もしそうなら、運の良いカモシカだな」と思った。
俺は理工学部だったからだ。
そのカモシカの頭蓋骨を持ち帰り、もう一度生き返らせることに決めた。
メカ・カモシカとして。
しかし、俺がカモシカの頭蓋骨に配線を通したり、回路を組み込んだりするたびにカモシカの角に手を引っ掛けて怪我をしたり、触れてもないのに台から転げ落ちたりするようになってきた。
1度台から落ちた頭蓋骨に腕を角で刺されたこともある。
カモシカは俺に生き返らせてほしいと願ってるのではないのだろうか。
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