そんなに珍しい話じゃないが、俺には父親がいない。
と言っても、顔も覚えてないってわけじゃない。
出ていくところを母親と一緒に見守ってたのが最後。
5歳の頃だったと思う。
玄関に立っている俺と母には目もくれず、ただ背中を向けて黙々と靴のひもを結ぶ父。
出ていく時も、こちらを向くことはおろか声さえ発しなかった。
当時俺は5歳。
普段父が出ていく所を滅多に見ない俺は母に聞いた。
俺:「ねぇ、パパ何で出てったの?」
・・・母は泣いてた。
もう誰もいない玄関を見つめながら、そして確かにこう言った。
母:「あの人はね・・・、人殺しなのよ・・・」
あの母の言葉が今でも頭に焼き付いて離れない。
親父の過去を知りたいような知りたくないような・・・。
Be the first to comment