俺の親父はマクドナルドが大好きで、毎日一回はマクドナルドの商品を食わないと落ち着かない。
本人はいいんだが、それにつき合わされる俺達家族はたまったもんじゃない。
次第に一緒に食べに行くのを敬遠しだした家族の態度に、親父は不満げだった。
なぜ食わない?
俺と一緒はいやなのか?
・・・違う、マクドナルドがいやなだけだ。
俺も母親も妹もはっきり親父にそう言った。
その日一日親父はふさぎ込んでいた。
だが、親父は反省したわけではなかった。
日曜日の夜、明日の学校の支度をして、部屋の電気を消した。
妹は既に2段ベッドの上で寝息を立てていた。
俺は妹を起こさないように1段目のベッドに潜り込み目を閉じた。
しばらくして、部屋のドアが開いた気配がした。
誰が入ってきたのか、薄目を開けて見ると、ドナルドが立っていた。
ドナルドは俺が起きているのに気づいていないようで、ゆっくりとベッドの脇に近寄ってきた。
薄く開けた目と気配から、ドナルドが上の妹を起こそうとしている様子が分かった。
ドナルド:「グッナ~イツ、ハハハハハハハ」
ドナルド:「ギィーーーーーーー」
ドナルドの陽気な笑い声、妹の悲鳴、思いきり揺れるベッド。
何かが上から飛び出して勉強机に激突した。
倒れる机、散らばる文房具。
母親:「なにやってるの」
ドアから母親の叫び声と息を呑む音が聞こえた!
部屋の電気をつけるドナルド。
その時初めて俺は、ドナルドの扮装をしているのが親父だと気が付いた。
親父の後ろ、床に倒れた机の下に、妹のピンクのパジャマと、トクトクと流れる血が見えた。
救急車が来た。
救急隊員は親父の格好を見て驚いた。
親父は興奮して救急隊員を殴った。
母親:「あなたは家にいて」
叫ぶ母親を押しのけ、一緒に救急車に乗り込む親父。
集まった近所の人も何も言えなかった。
俺は1人、めちゃくちゃになったままの部屋にいた。
親父は、俺達のマクドナルド嫌いを直そうとあんな真似をしたのだと、俺と母親に話した。
妹は床に敷いた布団の上にいた。
目を見開き、歯を食いしばり、手足を出鱈目に激しく振った。
妹:「んーんーんー」
頭を打ち背骨を傷めた妹が、布団の中で唸り声を上げた。
妹:「おんぬぃぃちゅぁんんん」
可愛かった妹が、僅か半年で別の生き物に変わってしまった。
母親は泣いた。
俺は黙った。
親父はグラタンコロッケバーガーを食べた。
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