昔の話。
阪神大震災の時、神戸市内の鉄道が寸断され、代行バスがピストン輸送していた。
会社の系列にバス会社があり、人手が足りなかったので応援の車掌を何度か引き受けた。
阪神高速が横倒しになり、現地に行くのも迂回経路を使っていたため時間がかかり、深夜02時に出庫、04時の始発便に間に合わせる感じ。
真冬のことで04時と言っても真っ暗だった。
券売機も復旧していないので、運賃を回収するバケツを持って駅に出来るだけ近い国道沿いの臨時のバス停に乗客を誘導した。
「おはようございます。運賃はこちらにおねがいします。」
乗降口でバケツを持ち立っていると、疲れた顔の乗客に混じり黒っぽい影のようなものが何度か通り過ぎ乗り込んでいった。
振り向いて確認しても、乗客に紛れてもう見えない。
同じバス停を何度もピストンするから、それを何回か繰り返した。
影のようなものがそれ以上ハッキリ見えることは無かったけれど、人の形をしていて、大人だったり子供くらいの大きさだったりした。
家に帰れずに、さまよっていたんだろうか・・・。
思い出すと切なくなる。