私が20の時の話。
母方の祖父母が癌やらなんやらで2人同時に倒れ入院。
祖母の頼みで誰もいない間、家を守ってくれとのことで私がその家にしばらく住むことに。
幼い頃から預けられる事が多く、もう長く住み慣れているようなものだったし、初めの予定では一人暮らしだったが、叔母と従姉妹が私1人じゃ心配だから、と一緒に住んでくれることになった。
少し話がズレるが、母方の家系は所謂見える家系で、私は時々はっきりと見えたり、体質としてよく連れて帰ってしまう、という感じ。
普段は「あ、ここにいるなぁ」、とか「ここやばいなぁ」、くらいにしか感じないのに対して特に従姉妹が強い勘の持ち主だった。
叔母は基本的にはあまり見えないが、以前職場で座敷童子に遭遇した、とかいう感じで、家系として私の母以外は中途半端に見える為、呼びこんだり連れて帰ってしまう人が多いのだ。
そんな私と従姉妹が絶対、近づかない部屋がある。
二階の仏壇のある部屋の向かいに部屋が2つある。
薄い襖で仕切られた2つの洋間の部屋だ。
何が見えたでもない、何があったでもない。
ただただ、なんとなく入りたくない、築20年にしては何故か気味の悪い雰囲気をしているのだ。
後に従姉妹が言うには、「私、死んだ御先祖様も見えるでしょ?でも、違うの。曾ばあちゃんならあんなに嫌な感じじゃないもの」と。
それもあって、嫌がる私と従姉妹は1階で、叔母だけ二階の例の部屋で寝ることに。
そんな生活がはじまって2週間程経ったとき、叔母が喫茶にでも行こう、と誘ってくれた。
もちろん私は快諾して、叔母に着いて行った。
そこで叔母が奇妙な事が起こっていると話し出した。
それは叔母が二階で寝るようになって3日程経った時だった。
朝起きると、洋間を仕切る襖が5センチ程開いていたそうだ。
あれ、昨日締めなかったっけ?
・・・そういう疑問だけが残ったそう。
夜になってもその気味の悪い疑問だけが頭から離れなかった叔母は、その日寝る前にきちんと襖を閉めたことを確認してから就寝。
そうして翌朝目が覚めると、襖は閉まったままだった。
そうか、気のせいか・・・。
そう安堵し、部屋のドアへと目をやった。
すると、ドアがまた5センチ程だけ、開いていたようだ。
しかし、そのドアは閉まりが悪く、よく半開きになっていたりする為、叔母は偶然かな、と気にしないようにした。
しかし、やはりいくら閉まりが悪いとはいえ、前日の襖の件もあり、気になった叔母はその日の夜に襖とドアがきちんと閉まったことを確認して就寝。
翌朝起きると、襖もドアも閉まったままである。
安堵しかけたとき、ウォークインクローゼットの上に小さな押入れのようなものがあるのだが、そこが全開に開いていたそう。
しかしその小さな押入れ、高さが約2メートルの位置にあり、小柄な叔母が開けようものなら脚立が必要になるのだ。
ましてや私と従姉妹がわざわざその部屋に入って開けることもないだろう。
襖、ドアと立て続けにあった為、流石の叔母も気持ち悪いと感じたようだ。
しかし気の強い叔母はその日の夜、襖、ドア、押入れ、きちんと閉まったことを確認してから就寝。
しかし翌朝起きると、今度はカーテンが5センチ程開いていたそう。
ここまでくるとその日の夜はノイローゼ気味に襖、ドア、押入れ、カーテン、部屋の開けれるものというもの全てを何度も何度も、絶対自然には開かないよう確認してから就寝したそうだ。
そして翌朝・・・起きると叔母は硬直した。
何故なら襖、ドア、押入れ、カーテン、全てが5センチずつ開いている。
叔母は逃げるように1階へと下りたのだという。
そして叔母がいう。
叔母:「5センチってね、丁度人が片目で覗けるだけの大きさなんだよ。私ずっと、夜中に誰に見られてたのかな。」
その後、母にその事を話すと、ああ、うん、となにやら歯切れの悪い返事をする。
詳しくは教えてくれないが、母もまたその部屋で寝た時に幽体離脱を起こしたことがあったそうで、その部屋で寝ると何かしら怪現象が起こるとか。
築20年と少し。
祖父母が建てた家で、そこに私たち家族以外住んだ形跡はないのに、あの家のあの部屋には居てはイケナイモノがいる。