頭のおかしい女

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

池袋から徒歩圏内、家賃3万という家に住んでいた。
トキワ荘的な、玄関が一箇所で廊下にそれぞれのドアがある、トイレも共同という、今ではなかなか珍しい物件である。

当時はライブハウスで仕事していたために収入も少なく、また職場まで自転車で通えなくもないということで友人からの紹介でここに住んだ。

俺の部屋は2階で4畳半、友人は1階で3畳だったと記憶している。
他の住人はどう生活しているかもわからない中年から老人で、全体的にくたびれた感じの人が多かった。

そんなボロなところではあるが、なんとか生活にも馴染んでいったある日のこと。

前日はたまたま漫画喫茶で某漫画を一気読みし、夕方手前に帰宅したと思う。

玄関を開けると、床に赤い500円玉ほどの汚れが点々としていた。
まるで血液のような色をしていた。

1階部分は友人の部屋あたりまで、階段にもその汚れがあり、2階の自分の部屋まで続いていた。

嫌だなぁとは思ったが、特に何も異変もなく、後日誰かが拭き取ってくれたのだろう、その汚れはなくなっていた。

ある日、友人と酒でも飲もうかという話になり、部屋から焼酎など2本ほど持って友人の部屋へあがった。

そこで以下のような話を聞かされた。

先日、頭のおかしい女がやってきた。
黒髪ロングだがボサボサで、顔もイッちゃったような風貌。

薄汚れたコートを着ていた。
手首からだと思われる出血があり、刃物を持っていた。

玄関をあがり、片っ端からドアをノックし、出た人に「どこ?どこ?」と、作りがボロなので、そういうやり取りも部屋にいても聞こえてきた。

出た人は皆「わからない」と答えるしかなかった。
そして女が友人の部屋にもやってきた。
友人は迷わずに俺の部屋を教えたそうだ。

俺、その日漫画喫茶に行ってなかったらどんな目に遭ったんだろう。

ただなにより怖いのが、そんな女がやってきて、なぜ誰も通報しなかったのだろう。

ブログランキング参加中!

鵺速では、以下のブログランキングに参加しています。

当サイトを気に入って頂けたり、体験談を読んでビビった時にポチってもらえるとサイト更新の励みになります!