親父が出張先で倒れて、現地の病院に入院した。
お袋と2人で慌てて駆け付けたら、親父は案外元気で、「過労でしょう」という事だった。
ひと安心して、部屋にお袋を残して、俺はオヤジの昼飯の食器を下げに部屋を出た。
清潔だが古い病院で、どことなく暗い感じがする長い廊下の突き当たりに配膳室。
小さな出窓に食器を置いて「すいませーん」と声をかけたら、スッと細い女性の手が出て来て、食器を下げた。
びっくりした。
磨りガラス越しに見える室内は電気も付いていないようだし、人の気配も無かったので、誰も居ないのか?と思っていたのだ。
しかし、気を取り直して「ごちそうさまでした」と言ったが返答は無し。
相変わらずしーんとしている。
なんだよ陰気くせえな・・・と思いつつ、戻ろうとしたら、看護師さんが1人、廊下をパタパタと駆けて来て、配膳室のドアを開け「○○さーん!」と呼ばわった。
・・・応答無し。
看護師さん部屋に入って行って、「○○さん?あら?誰も居ないの?」などと言ってる・・・。
いや、たった今、、手が出て来て食器下げ・・・。
・・・まあいいや。
親父、早く善くなってここ出ような・・・。