原型をとどめないほどメチャクチャに

カテゴリー「心霊・幽霊」

母親がまだ独身の頃、職場に陰気な女子社員がいたそうで。
なぜかあまり仲は良くなかったんだけど、その女子社員の方はウチの母にだけはいつも「悩みがあるので聞いてほしい」としつこかったんだそうな。

彼女は893の愛人とかいう噂があり、悩みというのはその893と別れたいという事だったらしいんだが、問題が問題だけに、他の女子社員はおろか男性社員からもそれとなく避けられていた。

母も先輩から近づかないよう忠告されていたが、ある日、いつものように「用事があるからごめんね」と断ったところ、ヤケにすんなりと「そう・・・」と言って帰っていったんだそうな。

母親も彼女の態度は気になったが、断り続けるのはしんどいし、なんだろ、まぁいっかwってな気持ちで帰宅した。

当時住んでた都内のアパートは木造2階建てで、窓の外にはベランダなどはなく、ただ落下防止の鉄柵がついているものだった。
で、母親の自室は2階だった。

帰ってすぐに仏壇に手を合わせ、お供え物を下げた時だった。

『コンコン・・・』

誰かがドアを叩く音がした。

こんな時間に誰??

同居している母の姉なら合い鍵で入って来れるはず・・・。
届け物にもこの時期心当たりがない・・・。
気味が悪かったので居留守を決め込もうと、そのまま足音が立ち去る気配を待った。

しかし立ち去る足音は聞こえず、なんだか空恐ろしい気分になったところ、今度は『コンコンコンコンコンッ!!!』と、せっぱ詰まったようなノック音に変わった。
そして、「あけてよっ!!あけてよっ!!友達でしょっ!?」という絶叫と、ドアを開けようとガチャガチャとノブを回す音が聞こえた。

その声は間違いなく、かの893の愛人の同僚社員であった。
母親は「やだ、なに人の後つけて来てんの!?いつも無視してるからってどういうつもりなんだ??」と怒り心頭。

一言怒鳴りつけようと玄関まで向かった所・・・。

『ガンガン!!ガンガン!!』

「あ~け~て~っ!!」と、今度は激しく雨戸を叩いて叫んでる。

母親は「ちょ、何アイツ窓まで上がって来てんだ!近所に見られちゃうじゃん!・・・でも、ここは2階でベランダもないのにいったい何処につかまってんの?」と思ったとき母は初めて体中に鳥肌が立ち、布団をひっかぶった。

音はしばらく続いたが、最後にいっそう大きくなり、ぱたっと止んだ。
その瞬間、母は体中を鋭い刃物でメッタ切りされるような痛みを感じ、気を失った。

翌日母が会社に着くと、なんだか周囲が騒がしい。
同僚に聞くと、どうやらかの女子社員が自殺したらしい。
ちょうど母の自宅に現れたぐらいの時間、千駄ヶ谷の駅で電車に飛び込んで、原型をとどめないほどメチャクチャに轢かれたとの事だった。(ニュースにもなったらしい)

あの斬り付けられた痛みは彼女の痛みとリンクしてたのかもということと、ドアをもし開けていたらどうなっていたんだろうと、未だに不思議な体験だそうだ。

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