数年前、現職時の警衛勤務中の話を聞いてくれ。
時間は深夜の2時半くらい、警衛所で監視モニターとにらめっこしてる時だったんだが、正門とは別の小さい南門(夜間は閉じてる)のカメラに妙なものが映りこんでいた。
パッと見、黒い塊。
よく見ると横向きに寝たような人間の形をしていて、まるで丸焦げの焼死体のようだった。
それがちょうど門の付近に転がっていて、警衛司令に「これ、何ですかね」とモニターを見てもらった。
警衛司令の曹長は「なんだコレ?人か?いや違う・・・?」と怪訝な目でしばらく見て、とりあえず巡察に確認させる事になった。
すでに駐屯地内を回ってる巡察に無線で「南門に不審なものが映ってるから確認してこい」と連絡して現場に行かせたんだけど、数分後南門に到着した巡察2名の姿がモニターに映っても、その焼死体???なんかまるで見えてないようで、無線からも「特に何もないですね~、どこら辺ですか?」という返事が返るばかり。
モニター越しでは明らかに”ソレ”が巡察隊員の足下にあるのに、やっぱり現場の2人には見えてない様子。
警衛所内の数人とも「モニターの故障か、レンズの汚れか何かじゃないか?」という話も出ていたが、不気味なのは巡察隊員の足下とその物体が重なった時、ちゃんとその物体が「踏まれた」ように重なって映るんだよ。
カメラやレンズの問題だったら決してそんな風には映らないはずなのに・・・。
いよいよ全員気味悪くなって、その場にいる中で一番下っ端だった俺も現場へ行って直に確認してくることになった。
現場の巡察とも合流して、例の物体のあるところを懐中電灯で照らしたんだけど本当に何も無い・・・。
現場に何も無い以上、こちらとしては対処のしようが無いのでひとまず警衛所へ戻って、通常の警衛勤務態勢に戻った。
もちろん南門モニターは特に注意して監視ってことで。
それからしばらく、30分くらい引き続きモニター監視してたんだけど、カメラを一瞬別の方向に動かしてまた例の画面に戻したらすっかり消えていた。
結局あれは何だったんだろうと話している内に朝になって、上番警衛に申し送って下番するぞという時に、例の南門のすぐ隣りにある民家で火災が起きてた。
一人暮らしだった50代の女の人が焼死したと、地元の新聞に小さく載った。