祖父から聞いた話。
祖父は戦時中、植民地になったベトナムで過ごしていた。
敗戦で日本へ帰る船に乗り込む時の事・・・。
船に乗り込む際は現地の係員が一人づつ日本兵の名簿と照合する。
現地民に対し友好的だった祖父は難なく乗船。
係員も名残惜しそうに別れの挨拶をしてくれたそうだ。
祖父の後ろの男の顔を見たとき、係員の声が変わった。
「お前はここに残れ。」
その男は日ごろ現地民に対して何かと因縁を付けては暴力を振るったり、現地女性に対して侮蔑的な行動をしていた男だった。
男の顔からサーッと血の気が退き、瞬時に黒髪が白髪へと変化していった。
まだ30そこそこの男の顔が老人の様になり口も利けなくなった。
祖父が90年生きてきた中で見た一番恐ろしい光景だそうな。