世の中、神も仏もないも

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

小学校のころ塾に通っていました。
といっても週に2度、昔の田舎の話です。
他の日は塾仲間で学校帰りに道草して遊んで帰っていました。

僕らが通っている小学校は市役所の近くにありましたが、市役所の周囲は広い林になっていて子供が遊ぶにはちょうどいい場所でした。

あるとき、塾仲間と帰っていると、みんなから馬鹿にされている奴が一緒になりました。
なぜ、そいつと一緒になったのか今では覚えていません。
やがて塾仲間で、ランドセルを奪い取ってアメフトのまねごとをしたり、帽子を取り上げて市役所まわりの林の木に投げあげたりしてそいつをいじめました。
やがて夕方になり、泣きじゃくっているそいつを無視してみんな帰りました。

翌日だったと思うのですが、そいつは学校では何も言わなかったのです。
塾仲間と2人で帰っていると現れて「筆箱がなくなったので返せ」と言うのです。
一緒にいたのは僕たち2人だけではなかったのに、そいつは僕たちのどちらかが筆箱を盗んだか隠したのだと思いこんでいるようです。

僕たちは怒ってそいつを例の林につれていき、疑ったということを責めたてました。
そして、どつきまわし、なきじゃくるそいつのズボンを脱がせ、パンツをはいで口につっこみました。

そして枯れ木の根本にあった溝にそいつを落としこみ、溝に寝転がったそいつの上から枯れ枝や枯れ葉をかぶせ、さらに近くにあったスコップで周りの土を掘って頭だけだして埋めました。
バケツと水を見つけて土を湿らせ、すっかり埋め固めてしまいました。

そこからはっきり覚えていないのですが、塾仲間とどっちが始めたのか、そいつを埋めた盛り土にスコップをつきたてました。
埋められた奴は口にいれたパンツでしゃべれないまま恐怖で泣きじゃくっています。
あばれるので、交代でそいつのあたまを押さえ、体に触れないようスコップを刺します。

僕はたしかそこでスコップを投げ出したのですが、その時、ゴリっという感触がありました。
見ると塾仲間の頭にスコップが当たって、怒っていました。

どういうわけか、彼の怒りはスコップを当てた僕ではなく、埋められた奴に向けられています。

彼はスコップを握ると、おおきくふりかぶって、埋められた奴の腹部にスコップを突き立てました。

それからどうしたのか、よく覚えていません。
たぶん動かなくなったそいつの顔にまで土をかけて埋めてしまったと思うのです。

生徒がひとりいなくなったのですから、大騒ぎだったと思うのですが、あまり覚えていません。
一緒にいた塾仲間ともあれから話をしていません。

あのときいなかった塾仲間が、前の日にそいつと一緒にいたとみんなに話していたことは鮮明に覚えていますが、とにかく我々は優等生集団でとくに疑われることもなく、行方不明ということで時間がすぎていきました。

大学に行ったころ、郷里の市役所は改築されました。
それまでの平屋の建物は駐車場になり、林だったところにビルが建ちました。
ビルを建てるときに、なにか出てきそうなものですが何も騒ぎはありませんでした。

もう就職して長いですが、あのことはすっかり忘れていました。
塾仲間もぴんぴんしています。
世の中、神も仏もないものです。

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