ホヴリノ廃屋病院は、チェルノブィリにはやや劣るものの地球で最も恐ろしい場所の一つ。
この病院は、1500床のベッド、診療所、ラボラトリー、ヘリポートを備えた医療施設として、1981年に着工されたが、地盤が弱かったため、ほぼ完成したこの大病院は、徐々に地下水に沈みはじめ、建設は凍結されてしまった。
モスクワ市当局は、今もその処置に困っているが、悪魔の崇拝者たちは、うまいことを考えついた。
あるセクトがホヴリノで人間や動物が消えた責任は自分たちにあると声明した。
このセクトの信者らは、血の儀式のために犬や物乞いたちを使っていたと言うのだ。
話は尾ひれがつき、警察はセクトの信者たちに対して非常線を敷いて、彼らをトンネルへ追い込んで銃殺し、彼らは、トンネルから真っ直ぐに闇の支配者の懐へ飛び込めたことに随喜した。
そんな伝説がモスクワじゅうに広まった。
暗い冬の晩には、今も、彼らがトンネルで斉唱するのが聞こえるとか。
毎年、冒険を求めてここを訪れる愚かな若者が、何十人も手足や首の骨を折っている。
この病院は、ゴスやエモやパンクなどの巡礼の地なのだが、穴や凹み、口を開けたエレベーターシャフトや剥き出しの鉄骨が、あちこちにある。
警察は、ときどき、隠れている冒険野郎たちを地下室の通風坑や屋根裏から引きずり出している。
この病院の主な幽霊は、叶わぬ恋ゆえに屋根から身を投じたアレクセイ・クラユシキンの幽霊で、階の一つには、一種の慰霊碑があり、その死を悼む内容のメッセージが、詩や散文や掻き絵の形で、壁一面に刻まれている。