ある日、俺は朝起きて台所に向かったんだが、そこには誰もいなかった。
いつもなら母と祖母が朝食の準備をしている時間なのだが・・・。
不思議に思い家のなかを探しまわったが誰も見つからなかった。
母と祖母だけじゃない。
父も、祖父も、弟も、妹も、ペットの犬も・・・。
今日は何かあるのかと思い、カレンダーをチェックしてみたが、それらしい”しるし”も無かった。
家の車もあるし、靴だって家族全員分そろっている。
まるで俺を残してみんな消えてしまったようになっていた。
テレビをつけてみたが、どの局も放送していない。
まさかここは夢の中なのか?そう思えてきた。
しかし、夢にしては現実感が有りすぎる。
とても夢とは思えなかった。
俺が混乱していると、チャイムが鳴った。
まさか家族が?
期待したが、玄関に立っていたのは全く違う人物だった。
中学時代に仲の良かった友達、Kがそこに立っていた。
K:「よう、ひさしぶり!」
Kは笑顔でそう挨拶した。
俺:「おう、なんでこんなとこに居るんだよ」
俺がそう質問した理由は、Kは中学2年の時に遠くに引っ越したためだ。
K:「はは・・・色々あってな、俺の不注意だよ」
Kはそう答えたのだが、俺はKの言っている意味がわからなかった。
俺:「お前こそなんでこんなとこに居るんだよ」
また訳の分からない事をKが言ってきた。
ここは俺の家なのに、俺が俺の家にいることになんでそんなに不思議がるのだろうか?
俺:「いや、ここ俺の家だし・・・」
そう言った途端Kの表情が変わった。
今まで笑顔だったKが、悲しそうな表情をうかべている。
K:「ああ・・・そうだな・・・悪い・・・」
小さな声でKはそう呟いた。
K:「じゃあ・・・俺帰るわ、また後で来るから」
そう言うとKは俺に背を向けて歩きだした。
俺はKの様子がおかしかったのでKを呼びとめた。
するとKが止まり、こちらに振り向いた。
Kは・・・今まで見た事も無いほどの悲しく、暗い顔をしていた。
K:「俺達・・・馬鹿だったよな・・・もう少ししっかりしてればな・・・後悔しても遅いけど」
そう言うとKはまた歩き出した。
俺はもうKを呼び止めなかった。