○○町2丁目で火事

カテゴリー「不思議体験」

私が所属している地域消防団の先輩T氏が話してくれた体験談です。

ある冬の夜のこと。
T氏が仕事から帰る途中、消防団の仲間から緊急連絡が入りました。

『○○町2丁目で火事らしい。出られますか?』

偶然にもその付近を運転していたT氏は、詳しい番地を聞き、現地で落ち合う約束をしました。

現地に到着すると法被と帽子を着用し、車を降りてあたりを見渡しました。
しかし、焦げ臭いにおいはなんとなくしますが、炎も煙も見えません・・・。
T氏は聞いた番地を頼りにその家を探し歩きました。

すると、「あの~消防の方ですか?」と聞いてくる方がいました。
その町内の町内会長で、火事の連絡があった家に向かうところだったので一緒に向かうことにしました。
その家は5人家族で両親、祖母と2人の男の子がいるとのことでした。

そしてその家に着いた時、T氏は明らかな異変に気付きました。
時間は夜の10時前、周りの家々は電気が付いているのに、その家は真っ暗で全く人の気配がしません。

でも車庫には車があり、出かけている様子ではないようです。
そしてあたりを漂う焦げ臭い匂い・・・。
チャイムを押してみましたが、電気が切れているのか何の音もしません・・・。

T氏は「消防団です!!誰かいますか!!!」と叫びながら玄関のドアを叩いてみました。
すると中から物音がして、ドアが開きました。

同時に大量の黒煙が噴き出してきました!
そしてその煙の中から「うあぁぁ・・・おあぁぁ・・・っ」とうめき声がして、数本の手がT氏の腕をつかみ、その煙の中に引きずり込もうとするのです!

T氏は慌ててその手を引き出しました。
すると母親とおばあさんの2人が外へ引きずり出されたのです。

T氏と一緒にいた町内会長の2人で安全な場所まで運び出したあと、T氏は再び玄関に向かい、「他に誰かいませんかーーーー!!!」と大声で叫びました。
しかし、物音も無く人の気配もありません。

中からは5cm先も見えないような黒煙が噴き出し続け、何の装備も無いT氏はこれ以上は危険と判断し、その2人を到着した市消防に引き継いで消防団と合流、消火活動に取り掛かりました。

その後、聞いた話によると、火事に気付いた両親と祖母は一度玄関まで逃げたのですが、子供たちが2階の子供部屋から降りてこないため、父親が子供部屋へ向かい、母親と祖母が心配してそのまま玄関で父親と子供を待っていたんだそうです。

しかし父親は階段を上りきったところで、2人の子供たちは子供部屋で、遺体となって発見されました。

死因は一酸化炭素中毒でした。

T氏曰く、「煙は怖い。だから絶対に単独で助けにいこうなんてしちゃいけないんだよ・・・」

そして最後にT氏はポツリとつぶやきました。

T氏:「でもなぁ・・不思議なのは、煙から出てきて俺の腕をつかんだ手は、右手が3本あったはずなんだよ・・・」

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