ちょっと長くなるかも。
私がまだ幼稚園児頃の話。
私には3つ離れた兄がいるんだけど、よく近所に住むばあちゃんの家でで夕飯食べたり、お風呂に入れてもらったりしてた。
うちとばあちゃんちの間には古い借家が一軒あって、何年も空き家になってたんだけど、その家の前を通らないとうちには帰れなかった。
ばあちゃんちで夕飯食べたりして外が暗くなると、家への帰り道はお兄ちゃんが手をつないでくれる。
だから外が暗くても怖いと思ったことなかったんだ。
でもある日の帰り道、いつもみたいに手をつないで歩きながら、ふと右側の古い空き家の方を見てしまった。
真っ黒な腰高窓に、見たことのあるおじいさんの横顔が映っていた。
あのおじいさんは確か大家さん。
だけど緑色で透けた、いつもと違う感じが子供心にも怖くて、私は目を逸らしたいのに逸らせなくなってしまった。
おじいさんは私達の進む方向とは反対側を向いたまま、すうっと進んで窓から消えた。
ほんの数秒の出来事だったと思う。
だけど、私は古い借家の窓を見たまま足がすくんで動けなくなった。
その時はお兄ちゃんが「ほら、おんぶ」と言って私をおぶってくれて、家まで無事帰ることができた。
他の人も書いていたけど、子どもってあまりに怖い経験をすると、その話を誰にも言えなくなるのかもしれない。
私も長い間誰にも言えなかった。
それが数年後、たしか中学生の頃、家族に「私が乳児だった頃の記憶」について話していたとき、突如兄が「子どもの頃の記憶と言えば」と、「亡くなった大家さんいるでしょ?おじいさんの方。ばあちゃんちの帰り道古い空き家の窓に緑色に透けた姿になった大家さんの姿を見てしまったことがある」って話し始めた。
うわ.・・・お兄ちゃんもあの時見てたんだ。
私も実はね・・・って話に。
なんでも兄はあの時「妹に見せちゃいけない」と咄嗟に私をおぶってくれたんだって。