震災前に、とあるコンビニで立ち読みしていた。
時間は夜の11時半といったあたりで、店内に客は自分ともう一人、あと男の若い店員。
早く帰って寝なきゃと思いながら、かれこれ30分ばかり立ち読みしてたんだけど、突然目の前でガラスになにかがぶつかる「ゴゴン」という感じの重い音がして、驚いて本から顔をあげて書籍コーナーに近いガラス面の音のした方を見ると、自分から1m少しくらい離れてたと思うけど、コンビニのガラスに外から張り付いた顔が見えた。
高さは自分の顔の位置よりちょっと下くらいで、書架のやや上のあたり。
自分はそれを見て「おわっ」という感じでのけぞったら、その顔はちょうどガラスにぶつけたスライムをべこべことはがすような感じで少しずつ消えた。
今、そのときのことをなんとか思い出してるところなんだけど、顔はたぶん男でしわがないから若いのだと思う。髪はどうだったかよく覚えていない。
不思議なのは、体はいっさい見えなくて顔だけなこと。さらに、ふつうはぶつけるならおでことか顔の一部になると思うけど、顔の前面全体がガラスにくっついてゆがんでいたこと。
顔の表情は、目を見開き口をOの字に開いて驚いているように見えた。
そして消えるまで2秒くらいはあったと思うけど、開けていた口が動いて何かを話そうとしたようだった。
それから変なのは、あれだけ大きな音がしたのに他の客も店員もこっちを見ることもなくなんでもない様子だったこと。
自分は外でだれかがイタズラでオモチャを投げたりしたのかと思って、外に出てみたけど下には何も落ちていないし、顔があったあたりのガラス面も他の所と変わりない。
イタズラにしても、コンビニの店内からは照明が写って外はよく見えないんだけども、誰かが投げた物を拾いにくるのは絶対わかったはず。
音入りでガラスに何かを映写したとかもなくはないだろうけど、そこまで手の込んだイタズラをされる覚えもない。
不思議だし、それから1週間以上怖かった。