5月だというのにキャンプ場に霜が降りた。
慌ててテントを張る父を弟が手伝っていた。
私は母と炊事場にいた。
テントの方を見ると、弟が眉間にしわを寄せて目を閉じている。
父のすぐ後ろ、手元を覗き込むように毛むくじゃらの1本足、一つ目に笠をかぶった案山子がいた。
皮膚がドロドロで、なんといっていいのか・・・不気味だった。
手にしていた鍋を落とし、母にしかられた。
片付けて顔をあげると目の前に立っていた。
気付かないフリをして料理を続けていると林の中に消えていった。
弟は私がそばに行くと、「あれはムリや・・・」とつぶやいた。