まだ大学生だった頃、友人4名で奥多摩にキャンプに行ったんだ。
きちんと管理されてる所は嫌だったので車で行ける所まで行って、そこから徒歩で山に分け入ってテント張れそうな所見つけようぜって事になった。
とはいえ俺らもあまりアウトドア経験も無いので山に入って20分くらい歩いた所にやや拓けた平地があったので、ここにしようって決めたんだ。
そこは大体20m四方くらいの平地でもともと農作地だったのか、鬱蒼とした中でそこだけぽっかり拓いてるって感じだった。
脇に農作業具倉庫兼住居(?)だったのか結構立派だったろう酷く朽ち果てた木造の小屋があった。
もう数十年来は人が住んでないような感じの建物でやや気味が悪かったのだが、その平地はテントを張るには絶好の場所だった。
案の定キャンプをするには最適で夕飯食って多少アルコールを飲んだりして快適な時間を過ごす事が出来た。
飲みながら話してると友人Aが「おい○○(俺の事)小便付き合ってくれよ。」って言うので「なんだよwお前怖いのwwww一人で行けよ」って言った。
A:「いいから付き合えよ」
しつこく言うので渋々付きあった。
仲間達から少し離れた所で俺もついでに連れションしようとしたら突然、Aが「なぁ今から場所移動しようって言ったらみんな嫌がるよな?」とか言う。
俺:「あたりまえだろ今もう夜だぞwこんな時間に移動出来っかよ」
A:「いや、それでも移動した方がいいって。マジでここヤバいわ。」
普段冗談言わないAが本気でビビりながらそんな事言い始めたので、俺も少し怖くなってAにどういうことだよって問い詰めたた。
A:「あの小屋誰かいるぜ。他の連中は小屋を背にしてるから気付いてないけど。」
俺:「嘘つけよ、電気も付いてねえしあんなガラスも割れてる様なオンボロ小屋にだれが住むかよ。」
A:「だからヤバいんだよ。ほら今右から2番目の窓の所見てみろよ。」
建物の詳細を説明すると向って左側が玄関っていうか入口があってそこから右に窓枠が3個ある。
3部屋あるってことらしい。
当然ガラスは割れてるけど。
俺はAに言われた通りに右から2番目、つまり真ん中の窓を見た。
最初は暗くてよく分からなかったんだけど眼が慣れてくると確かにいた。
A:「見えるだろ?あれ女の子だろ?」
確かに4~5歳くらいの女の子が笑いながら窓枠に隠れるようにこっちを覗きこんでいる。
窓枠に足掛けてまるで俺達の方に来そうな雰囲気で・・・。
俺:「うわっ見えるわヤバいな」
俺はAにそう答えると同時にもう一つの事に気付きAに言った。
俺:「おい建物の左脇のデカイ木の陰にも変な女がいる。」
建物玄関脇にひと抱えくらいありそうな木が生えてるのだがその陰から女が笑いながらこちらを覗きこんでる。
そして俺とAの方でなく背にして気付いてないBとCの方にゆっくり歩いてる。
A:「な?ここヤバイだろ?帰ろうぜ」
俺:「分かったみんなに言ってもう帰ろう。」
俺とAはわざと平静を装って残る2人BとCのいる所へ戻って行った。
俺はなんて説明しようかなと思いつつ彼らのそばに急いだ。
するとBが俺らから後ずさりしだした。
B:「おい、すぐにここから出よう。Cも同じ事言ってる。早く!」
俺:「なんだよ、もしかしてお前らもなんか見たのか?」って俺は不安になって聞いた。
C:「いいから早く行こうぜ。ここヤバいって。」
そうかこいつらもあの女の子と女の存在に気付いてたんだ。
女の方はもう10mくらいの距離に近づいてるし、建物の女の子も窓から出てる。
B:「お前ら気付いてねえのかよ!早く逃げよう!」
もうBもCも半分泣いてるようだ。
俺:「分かってる、俺もAも女と女の子に気付いてる。俺らもここから出ようって話してたんだ。」
B:「女?えっ?女もいるの?」
俺・A:「えっ?」
C:「今もそうなんだけどさ、さっきお前らが小便してる間からずっと○○とAの間に変な男が肩組んでるぞ」
恐る恐る右肩を見ると青白い男の腕と手が見える。
さらに後ろを向くと、見知らぬ男が笑いながら俺とAの顔を交互に見ている。
「うわああああ」
俺達はもう荷物もそのままに昼来た道を振り向きもせず必死で逃げた。
途中まで女だけが笑いながら俺達を追いかけてきた。
なんとか全員俺らは車にたどりつき置いてきた荷物はそのままに麓まで逃げた。
それ以降別段俺の身に何もない。
その場所がなにかのいわくがあるのかどうかも分からない。
ただ車の持ち主のAにはトランクの中に男の霊が入ったいったのを見た事は言っていない。
恐らくいまだに俺らの荷物はそのままそこにあるんだろうな。