狐か神隠しのようなもの

カテゴリー「不思議体験」

20年ほど前に100年に一度と言われる大雪を体験した。

当時11歳。
数年前に100年に一度と言われた大雪が比じゃないくらい。

その日は冬休みの最中で、小学校の隣の保育園に勤務する姉が「こんな雪じゃ保育園が危ない、雪下ろししてくる」と。
居間には俺と母、二人とも姉を止めた・・・が、聞く耳持たず姉は出て行った。

こんな大雪の日に雪下ろししたって・・・すぐ積もっちまうよ・・・。
子供にすら言わなくてもわかることだった。
姉を心配した俺。
母も心配だから付いて行ってやれ、と。

歩いて10分の距離にある保育園につくのに、その日は30分以上かかった気がする。
当時150cmの俺のひざ上まで積もった雪が行く手をさえぎり、空は雲で覆われ白い世界に光はささず、遠近感もない。
2~3m先を歩く姉の消えそうな背中を見失わないようにするのがやっとで、歩くペースが変わらない姉に追いつこうと、ときどき走ったつもりだが、距離は縮まらない。

現地についたら安心した。
姉の目的地はここだし、現地に着いたときには姉の姿は見えなかったがここにいるはずだから。
雪をかいていれば逆に俺を見つけてくれるだろう、と。

門柱の雪をかきながら思った。
・・・そういえば、どうやって屋根の上に上るつもりだったんだろう・・・。

ふと保育園の屋根を見る・・・。
雪が積もってるだけだ、人影もない。

俺:「あ、やっぱり諦めたな。そもそも危ないことはしない姉だもんな・・・多分もう帰ったな、俺も帰ろう」

こんな日に職場の雪下ろしやるなんていう正義感の強い姉だったからこそ、帰宅時に俺を探そうと声も出さない姉に「薄情だなぁ・・・家に帰ったら文句いってやろ」なんて思ってた。

通学路のカーブミラーや塀を頼りになんとか帰宅した。
そんな俺を待ってたのが、コタツにあたっていた姉と母。

姉:「おかえりー・・・あんたどこ行ってたの?」

はぁっ?本当に脊髄反射で声が出た。

母:「こんな雪の日に何時出ていったの?」

?????

俺:「いやいやだってねーちゃんが保育園の雪かきいくっつーから心配で後ついてったんじゃん!!」

姉:「え?あたしずっとここにいたよー?」

本気でしらばっくれてる、もういいやと思って部屋に行って寝た。

時は過ぎ、一昨年(だったかな・・・?)姉と通話する機会があり、大雪の年だったこともありふと思い出したように姉にこの話をした。

俺:「なんか100年に一度とかニュースで言ってるけど、18年くらい前にもっとひどい大雪の年あったよね?」
姉:「え~そんなんあったかなぁ・・・?」

俺:「だってあんとき俺ねーちゃんとこおっかけて・・・」
姉:「ん?しらんしらん」

俺の時間が少し重くなった・・・。
この年だからわかる、あんな大雪の日は俺ならお互いを紐で結ぶ。
そう思ってたら姉からも同じ趣旨の言葉が発せられた。
その後、両親に当時の確認をしたら、どちらも覚えてない。

不安になった俺は過去の県の積雪情報をネットで調べたが・・・その年は例年通り、と書かれていた記憶がある。(少なくとも大雪とはなかった)

その後、俺はオカ板でこの話を端折ってレスしたら、何人かは俺と同じ大雪を経験していたという。
オカ板の話見てて時々ふと思い出して思う、もしかしたら狐にバカされたか神隠しの類に触れたか。

ただ、まだはっきりと覚えてることがある。
その大雪の中を歩いてるとき、どうにもならないほどの冷たさは感じなかった。

姉を見失う不安感はあったものの、身に降りかかる凍傷などの危険はさほど感じなかった。
もっともっと雪が降ったらこの世界はどうなるんだろうって言うちょっとしたワクワクもあった。
そんな体験でした。

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