俺が学生時代、リア充じゃないけど男友達なら沢山いた。
そんな中、クリスマスになってリア充はカップル連れでどっか行ったが、取り残された俺たちは友人の実家でパーティすることになった。
ただのパーティだとつまらないから、と季節外れの百物語をやることにした。
よくある夏の夜中に怪談を話す度にろうそく1本消していく、アレな。
でも、冬だし暖房壊れてるし、こたつだけだと上半身寒いから、ということで、逆に怪談1個話終えるたびにろうそく1本ずつ点けて温まろうぜ、って話になった。
本来夏にやるものを冬にやるから、逆に点けていくのも一興だろ、ってね。
そして出てきたのが、ろうそく100本刺さったクリスマスケーキ。
もはやケーキとは言えない、まさに異形だった。
酒が入っていたせいか、その異形を見てみんなで大爆笑して、一通り笑い転げた後、明かりを消して早速怪談を始めたんだ。
本当に100話の話終えたら幽霊が出てくるのか?と一部の人は怖がって、一部の人は興味津々で、俺みたいな一部の人はどっちでもいいやって気分でローテーションで怪談をするたびに点火用のろうそくを持って、1本、また1本と火を灯して行った。
点火用のろうそく1本だけで真っ暗だった部屋が、徐々に明るみを帯びて、みんなの影がゆらゆらと揺れていくのがなんかリアルだった。
皆火を付ける場所はバラバラで、中央の方に火を付ける人もいれば、端っこの方に火を付ける人もいた。
そして100話まであと15話辺りにまで差し掛かった時、異変が起きた。
部屋の中で風も無いのにろうそくの火がまるで風が吹いているかのように流れるような炎を上げ始めた。
それでもお構いなしに怪談を続けてはどんどんろうそくに火を付けていく男ども。
そして、あと10話くらいになった時、突然炎が大きくなり、まだ点いていないろうそくにも一斉に火が付き、猛烈な大火炎となった。
それを見た俺は、ヤバい消火器だ!って玄関までダッシュして、玄関の消火器を抱えて部屋に入ると炎は天井まで届いて、いよいよヤバい状況になっているのに皆唖然としてそれを眺めている。
俺:「おい何やってんだよお前ら!」
俺が叫んでも皆ぽけーってしているようなので、もうお前ら真っ白けになっても知らねーぞ!って感じで消火器を大炎上しているケーキに向かって吹きつけた。
何とかケーキの炎は消えたみたいだが、天井に燃え移ったみたいで、そっちにも消火器をぶちまけた。
そこでみんな我に返ったみたいで、「お前折角のケーキに何てことしたんだよ!」って真っ白けになった姿で逆ギレされた。
俺は黙って天井を指さした。
そこには火が燃え移って穴が開いていた。
そこでみんな事情を把握できたみたいだった。
天井にも消火器ぶちまけたので見た目上は鎮火できたようだが、念のため消防車呼んだ。
皆曰く、「別に炎は大きくならずに普通に怪談しながら1本1本と点けてたよー、あと最後の2本だったのに・・・・・・」って口々に言うが、俺から見たら最後の10本で大炎上した辺りから何も話さなくなってた。
遅れて到着した消防士に見てもらい鎮火を確認してもらって、その後状況を説明したら「あーそれ火災旋風ですねー」って言われてその時は、何それおいしいの?状態だったけど、あとでググっておおよそ把握できた。
でもまだ疑問が残る。
・火災旋風って、無風状態でもろうそく集めるだけで起きるもんなの?
・てか、なんで俺以外大炎上していることに気付かなかったの?
結局この2つは解らず仕舞い。
後でもう一つ思い出した謎。
俺が消火器取りに階段駆け下りて行ったとき、みんなは「え、俺君そこで○○君の話聞いているふりして寝てたじゃん」って真顔で言ってた。
確かに酒のせいか、途中少し眠たくなって、一時はコクリコクリと舟漕いでいるところまでは来ていたが、完全には眠ってはいないし、終盤近くで急激に目が醒めてきたし、そもそも寝ていたら大火炎になど気づかないはず。
もしその話が本当なら、その眠っていた人は誰だったのだろう。
もし本当にそれが俺で、消火器取りに行っていなかったら俺たちどうなってたんだろう。