母は祖父が65の時の子で、もちろん自分が生まれたときにはとうに亡くなっている。
もう70過ぎの母が祖父から聞いた話。
そのぐらい古い話。
母の実家は海辺の曹洞宗の寺で、祖父が若い頃は曾祖父が住職をしていた。
海で行方不明者が出ると、その家族が曾祖父の元に不明者の『へその緒』を持ってくるのだとか。
舟を出して紐で縛ったへその緒を海に浮かべて経を始めると、潮に乗って流れていきクルクルと周りはじめて、沈む場所に不明者がいるのだと。
それを村の人がありがたがる様を何度か見て、祖父は「潮の流れが巻いてるところに何かが沈むのだから、遺体だって寄せられるじゃないか」と思ってたらしい。
祖父は自分が住職になって初めてへその緒を持ってこられた時、同じようにやっても底に遺体はなく、日にちが経つと浮かんで見つかる。
何度か機会があったが、曾祖父のように成功した事はなかったそうだ。