友人の話。
彼の家近くの山中には廃病院がある。
といっても残っているのは基礎だけで、よくそこを散歩するそうだ。
ある日、地下に降りる階段を見つけた。
瓦礫で巧妙に隠されていたのだ。
降りてみると途中から日の光は届かなくなっており、眼下は真っ暗。
更に降りようかどうしようか迷っていると、ふっと空気が生暖かくなった。
同時に、饐えたような臭いが地下の闇中より上がってくる。
この下で何か死んでる?
次の瞬間、いきなり下の方からけたたましい吠え声が聞こえてきた!
階段一杯に反響する、おびただしい犬の声。
物凄い勢いで、階段を彼の方へ駆け上ってくる。
必死で階段を駆け上り外に飛び出した途端、声はふっつりと聞こえなくなった。
何かが追ってくる気配も既に感じられなくなっていたという。
「今でも散歩は続けているけど、件の階段には近よらないよ。」
そう言って彼は笑っていた。