私がまだ高校生の頃でした。
その日は、当時仲の良かった友人Iの家に泊まりに行くことになっていたので、二人でIの家まで自転車で向かっていました。
夜9時を過ぎていたと思いますが、途中、地下通路を通ることになりました。
前を見ると、歩行者用の出口階段に誰か座っているのが見えました。
自分は、こんな時間に誰が座っているのだろうと、Iを置いて、自転車のスピードを上げました。
階段まで近づくと、そこには、黄色の帽子を被った小さな女の子が、うつむきながら座っていました。
よく小学校1年生が被っているあの黄色の帽子です。
夜9時を過ぎているというのに、子供がこんなところに座っているのは、とても不自然だったので、お母さんとはぐれて迷子にでもなったのかな・・・と思い、自転車を降りて、その子に話かけたんです。
私「どうしたの?お母さんは?」
少女「・・・・・。」
私「迷子になっちゃったの?」
少女「・・・・・。」
何も答えてくれません。
ずっと下を向いたまま、まったく動きもしないのです。
私は、女の子が何も話してくれないし、顔もあげてもくれないので、しゃがんで、下から女の子の顔を覗きこもうとしました・・・。
と、その時、Iが後ろから追いついてきて、「おい!!何してるんだよ!早く行こうぜ!!」との声が・・・。
内心、小さい女の子がこんな夜遅くに一人でいるのに、冷たい奴だなぁと思いながらも、Iがどんどん行ってしまうので、慌てて自転車に乗りました。
Iに追いつきましたが、女の子のことが気になって後ろを振り返り、階段をもう一度見ました。
女の子はいませんでした。
自分が、自転車に乗って、友人を追いかけている間に、どこかへ行ったのかな?
無事に家に帰れたのかなぁ?と普通に思っていました。
そんな時、Iが私に話しかけてきました。
I「お前、階段の前で自転車降りて、何してたん?」
私「はっ?小さい女の子が座ってたじゃん??」
I「まじでー!誰もいなかったぜー!お前、俺を驚かせようとしてるなぁ?」
私「ちょっと待って!ほんとに誰もいなかったのか?俺は、驚かそうなんて思ってもいないし、ほんとに女の子がいたんだけど・・・。お前こそ、ほんとは、女の子いたのにわざと誰もいなかったなんて言ってるんじゃないのか?」
I「いや。まじで、誰もいなかった。」
私「・・・・・・。」
I「・・・・・・。」
Iと私「うわー」と、全速力で自転車をこぎ、その場を逃げ去りました。
後で、知ったのですが、何十年か前に、その自転車地下道の近くの工事現場で、誘拐殺人事件があったそうなのです。
その時、殺されてしまった女の子だったのでしょうか?
自分は、まったく、霊だとは思ってませんでした・・・。
友人からの誰もいなかったとの言葉がなければ、霊だと気づかずに、あの女の子無事に家に帰れたのかなぁーくらいで終わってたのですが・・・。
とても寂しそうでした・・・。
普通の人間だと思ってすれ違っている多くの群集の中に、霊が混じっていることがあるのかもしれません。