私の部屋は二階・・・登ろうと思えば簡単に・・・

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

私がまだ大学生のころ、愛媛で一人暮らしをしていた。
サークル活動ばっかりして勉強はそっちのけ。
明け方までカラオケやったり飲み会やったり結構乱れた生活をしていた。

あれは蒸し暑い夏の終わりだったと思う。
その日も友達と二時頃まで過ごして部屋に帰ると、レンタルビデオを返していないことに気がついた。(開店までに返せば延滞金かからないなー。でも時間も時間だし一応女だし・・・今から自転車で大通りに行くのも嫌だな・・・)
ちょっと迷ったけど、貧乏学生の性で結局返しに行くことにした。

ビデオ屋まではポツポツだが街頭がある大通りを通って行くので、深夜二時過ぎにも関わらず思ったより怖くはなかった。
だけど車が一台も走っていない道路は不気味で、しんと静まり返っていた。
スピードを出してぐんぐんこいで、ビデオ屋まであとわずかになった時、郵便ポストの陰から男が出てきた。

「あぶいじゃびやでや!!!!!!!!」

男が物凄い早口で何か言った。

私は突然の出来事に心臓が止まるくらい恐怖を感じて、急いで自転車のハンドルを切って道路に飛び出した。

それから結構めちゃくちゃに、とにかく逃げないとという一心で、10分くらいは走ってたと思う。
でも家に帰るにしてもあのポストの前を通らないと帰れない。

勇気を出してものすごい慎重に辺りを確認しながらビデオ屋まで引き返し、あの男がいませんように、いませんように、と祈りながら自転車を降りた。

男はいなかった。

頭のおかしい人なんだ、ああいう人はどこにでもいるし、となんとか自分を落ち着かしてビデオを返却した。
すぐに自転車にまたがり部屋に戻って鍵をかけ、その日は疲れてそのまま眠った。

朝、異臭で目が覚めた。
頭が重くて、髪に乾いた何かがへばりついている感覚・・・。

誰かの精液だった・・・。

その場で飛び上がりました。
ポストのあの男のもので間違いない、腰が抜けて、大声で泣いてしまった。
髪を何度も何度も洗ってシャワーを何度も何度も浴びてそれでも嫌で、授業はサボってそのまま髪を切りに行くことにした。

服を着替えて玄関を出ようとして気がついた。
カーテンが揺れてる。

ビデオ屋までだからと網戸のまま出て行ったんだった。
私の部屋は二階・・・登ろうと思えば簡単に登れる・・・。

親に事情を話してすぐ引越し、しばらく友達と一緒に住みました。
今でもあの男の顔がうまく思い出せないけど、暗闇は大嫌いになりました。
あとポストも怖くて震えます。

結局その後三年愛媛に住んだけど、まだそれらしい男は捕まっていないらしいです。

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